ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

必殺!裏稼業の凄い奴ら

暗闇集団“観音長屋”  1994年


中村はん、この稼業辞めたらあきまへんで

 主水が『必殺!主水死す』というクソ映画で、これ以上なく情けなく酷い、ファンの気持ちを踏みにじりまくった死に方をしてしまった。よくもまぁ、あそこまで酷い映画を作れたものだと感心する。その後も三味線屋勇次はなかなか立派に仕事をしていた(たとえサッチーに出会っても、だ!)ので一安心だけれど、必殺ファンなら、主水は掟と情の間で揺れ動き、結局、情に傾いたせいで、裏社会の掟によって無残な最期を迎える、というのを夢見ていたはずだ。昔なら、念仏の鉄と棺桶の錠の間で、うまく立ち回っていたけれど、後期はグダグダになってましたからね。

 主水の最期を描くなら、主水のミス(仕事の現場を子どもに見られたが、その子どもを始末せずに見逃したとかいう「情」関係のミス)でチームが危機に陥り、主水は一時、姿を消す。激化する仕事人狩り。裏の組織(寅の会のようなもの)は、仕事人狩りと主水の相打ちで事態の収拾を図るべく、三味線屋勇次に主水を引っ張り出すよう要求する。これに反発する飾り職の秀。そうこうしているうちに、とうとう主水の素性が知れ、「婿殿が仕事人だなんて」と嘲笑っていたせんとりつが奉行所に引き立てられ、拷問を受けて死ぬ。何もかも失った主水は、仕置きでも仕事でもなく、復讐のために姿を現す。主水、奉行所、裏の組織の三つ巴の激闘。「仕置きだ仕事だなんて粋がってたが、結局、俺は、俺を認めてくれない世の中に仕返ししたかっただけなんだ……つまらねぇ話だ……最期はババァとかかぁの仕返しのために死んじまうのか……」戦いの最中、主水は死ぬ。その後、奉行所と裏の組織は手を結び、互いを利用して繁栄していく。組織に残り仕事を続ける勇次。足を洗って江戸を去る秀。中村家は廃屋と化している……これが理想だったんだがなぁ。

 それはさておき、これは必殺の研究本としては、私が最も充実した読み応えを感じた本である。資料性はイマイチだが、なかなか興味深い評論もあり(番組プロデューサーには不評だったようだが)読み物としては一流といっていいでしょう。続編『さらば必殺!裏稼業の凄い奴ら』も面白い。希望としては、第3弾として、一大ブームを巻き起こしたのにマニアの評価は低いテレビの後期作品群についての研究本を是非出して欲しい。まぁ確かに『必殺まっしぐら!』なんか、明らかに何も考えんと作ってるもんなぁ。なんでマリオやねん(でも意外とストーリーの評価は高かったりする)。『仕事人Ⅴ旋風編』に至っては悲惨の極致、いつ終わったのかも定かでない、気が付いたら死んでたひかる一平。論評しようがないと言われたら素直に引き下がるしかないんやけど。でも実は密かに『渡し人』が好きだったりする私。あれのラストって、シリーズでも上位に食い込める味わいがあったと思う(『仕事屋稼業』のパクリというのは言わない約束)。それなのに何故、必殺のサントラに主題歌「瞬間の愛」が収録されなかったのか、これが返す返すも許せぬ。説明しろ、中村雅俊!らっきょう食うとる場合やないぞ、コラ!


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