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ダイキチデラックス

この国の仇 「反論できない正論」を討つ

福田和也  1998年


人心を惑わす「仇」の正体は?

 石原慎太郎都知事が、2000年4月、陸上自衛隊の式典で「東京では、不法入国した三国人、外国人が凶悪な犯罪を繰り返している。大きな騒じょう事件すら想定される。警察の力には限りがあるので、自衛隊も、治安の維持も目的として遂行してもらいたい」と発言したことが何かと問題になりましたが、①「三国人」は差別語ではないという点については石原の言うとおりである(「三国人」とは、「当事国以外の第三国の国民」のことであり、第二次大戦後の日本では、日本に居留するが日本国籍を持たない(つまり戦勝国民でも敗戦国民でもない)朝鮮、台湾等の旧外地の人のこと)。まぁ既に死語と化している言葉を何故今使うのかという疑問はあるけれども。……とか思っていたら「三国人は不良外人という意味だ」などと言い訳していますね。これは明らかに誤用であり、差別的意図があるといわれても仕方がない。醜い言い訳なんかせず、毅然としておればよいのに。②警察の対応の限界を超えたら自衛隊の出動を要請するというのは当たり前の話で、今までだって例えば地下鉄サリンのときなんかは自衛隊が出動していたでしょ。自衛隊法に「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し我が国を防衛することを主たる任務とし、必要に応じ、公共の秩序の維持に当たる」って書いてあるやないか。何を今更やいやい言うことがあるのか。

 と、いうわけで、いやはやマスコミというのは無知かつ無恥の能無し軍団やということが、またまたばれてしまいましたね。自分でものを考えたことが無く、また考える脳味噌も持たず、騒ぐだけ騒いで庶民の味方、正義の使者面しているあたり、まことに救いがたい。

 石原都知事については、その言動が物議を呼びまくっており、嫌いだという人が圧倒的に多い気がするけれど、私は好きなんですよ。この人の言っていることは筋が通っている。思想を異にする人だって、それを否定はできないはずだ。何も100%受け入れる必要はないけれど、少なくとも、テレビやら新聞やらが垂れ流すニュースだけを、そのまま受け入れるより、「世の中にはいろいろな考え方がある」こと、「テレビや新聞が報道しないニュースもある」ことを知り、したがって「報道には、大なり小なり、何らかのバイアスがかかっている」ことを知り、自分なりに、いろんなことを調べて、ものの考え方を確立することは、とても重要だと思うのだ。この人の言うことを聞いて、自分が置かれている現状に危機感を持つのは大切なことだと思う。

 で、なんでこんな話をしているかというと、今回紹介している本を読んでもらうにあたって免疫をつけておいてほしいからである。この福田和也という文芸評論家は右翼です。かなり過激です。しかし、言っていることは極めて真っ当であり、筋の通ったことである。「この国を侵食し、解体してしまう言葉が蔓延している。それは「正義」「人権」「平等」「民主主義」などという言葉である。国を食い荒らし、人の心を荒廃させる真の敵を明らかにする」……私ゃ右翼じゃない(天皇万歳じゃないからね)し、左翼でもない(共産主義ってダメやからね)けど、この本は実にマトモなことを書いていると思うぞ。こういうのを「世間の良識」というのだと思っていたのだが違うのか。


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