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ダイキチデラックス

別冊宝島 映画宝島vol.2 怪獣学・入門!

1992年


映画評論家たちが見過ごしてきた「怪獣映画の思想」を初めて徹底的に解読

 最近、別冊宝島って版型変わっていますよね?映画宝島なんて今でも出ているんですかね?別にどうでもいいんですけどチト気になる。最近、面白い本がどんどん無くなっていく気がしていますんでね。

 さて、当時『ウルトラマン研究序説』というベストセラーがありました。買っていませんけれど。チラッと立ち読みだけしました。退屈でした。正直、あんなつまらん本やとは思わんかったぞ。なんというか、単なる揚げ足取りというか、いちゃもん付けてるだけというか、マニアをニヤリとさせるわけでもなく、素人さんが楽しめるわけでもなく、別にどうでもいいことがダラダラと書いてあるだけの駄本でしたね。「ウルトラマンなんて下らないものを、お利口さんが取り上げてみましたよ」なんていう臭さがぷんぷんしました。

 という前振りの後で、この本の帯を見てみましょう。「これは『ウルトラマン研究序説』のごとき学問ゴッコではない!驚くべき発見に満ちた、本気の研究である!」と書かれております。素晴らしい。こうやって、他の本(しかもベストセラー)をこき下ろす姿勢が清々しいですね。内容も期待に違わぬ面白さ。映画批評家たちが見過ごしてきた「怪獣映画の思想」を、初めて徹底的に解読!というわけで、「ゴジラはなぜ皇居を踏めないか」……ほらね、読みたいでしょ。その他「ヌーベル・ヴァーグは特撮に実を結んだ!」「モダンアートの結晶としてのウルトラ怪獣」など力作評論が目白押し。なお、『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』と同趣旨(同一原稿の再構成版)論文「ウルトラマンは、なぜ人類を守るのか」、『怪獣使いと少年』の元になった論文「ウルトラマンにとって「正義」とは何か」も入っています。「幻の12話を20年間追い続けた男」という『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」が欠番になった経緯を書いたコラムもあります。ところが、一部では有名な話ですが、これは第二版以降削除されています。軟弱ヘタレのくせに、都合の悪いことを書かれそうになると写真使用許可を出さないという圧力をかけることで有名な円谷プロが動いたそうです。その昔、頭のおかしい活動家(しかも一名)が頭のおかしい朝日新聞(これは会社ぐるみ)と一緒になって起こした抗議に簡単に屈した過去を掘り起こされたくなかったのでしょうか。あの「抗議」なるものが、作品自体を論じるなんてものではなく、活動家の思い込みとアイデンティティ確保のためだけに起こされ、それにアカで反日の朝日新聞が乗っかって騒ぎ立てただけという、実にくだらないものだったということがハッキリ分かるコラムだったんですがねぇ。

 ところで、世間には本来エンターテインメント作品である怪獣映画を、こういう風に論じることについて否定的な見方があります。それも一つの考え方だとは思いますが、こんな本を読むのはどうせオタクだけですからねぇ。ターゲットが絞られているから、ええんちゃうんかなぁと思います。作品の面白さを紹介する場というのは別にある気もしますし。いずれにせよ、妙な圧力がかかったりすることなく、いろいろ論じられる場が増えていくことが大切なのだと思いますがね。


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