ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

彼女はたぶん魔法を使う

樋口有介  1990年


反論するわけじゃないが、俺は君が言うほど、気取っても恰好をつけてもいない

 38歳の刑事専門フリーライターの俺、柚木(「ゆずき」と読む。私は長いこと「ゆうき」と読んでました)草平は、雑誌への寄稿の傍ら事件の調査も行なう私立探偵。売れっ子コラムニストの妻と10歳になる娘とは別居中。過去に複雑な事件を起こし退職したが、元刑事という人脈を活かし、元上司で不倫相手のキャリア、吉島冴子(こっちも既婚。『シティーハンター』の野上冴子とイメージがダブってしまう……)から未解決の事件を回してもらっている。今回俺に寄せられたのは、女子大生轢き逃げ事件。車の塗料から車種も年式も判別されたのに、犯人も車も発見されないという。さっそく被害者の姉・島村香絵を訪ねた俺は、轢き逃げが計画殺人ではないかとの疑惑を打ち明けられる。彼女の妹の関係者を洗ううちに元親友や友人(みな美人で良い性格)に心惹かれる彼であったが、話を聞いた被害者の同級生が殺害される。

 ……というわけで、謎の糸をたぐり寄せるたびに、出逢うのはいろんなタイプの美女、美女、美女。殺人事件の謎ときから、掃除、洗濯、料理をこなし、おまけに「いい女」にも強い柚木がさり気なく活躍する人気シリーズ。なお、ここで第1弾を紹介しているのは、シリーズの中でこれが一番優れているとかいうことではなくて、ここから読み始めてシリーズ全部読め、ということである。良いですか。『初恋よ、さよならのキスをしよう』、『探偵は今夜も憂鬱』、『誰も私を愛さない』、『刺青白書』が出ていて、しばらく途切れたので心配していたら突如復活、『夢の終わりとそのつづき』、『不良少女』、『捨て猫という名前の猫』、『片思いレシピ』と順調にリリースされています。全部読みなさい。誤解を恐れずに言いますが、ハードボイルドというのは、文体さえ肌に合えばOKなのです。一本一本の違いなんて殆ど気にならないし、読み終えた後、ストーリーなんか全然覚えてないものなのだ。雰囲気と印象的な会話、これが残ってりゃ良いんですよ。

 映像化もされていまして、主人公、柚木草平を鹿賀丈史が演っていましたね。なんか違和感あるんだけどな、原作ファンとしては。あんなガリガリのイメージ?もぉちょっと崩れた感じでも良いような気がするんですけどねぇ、ちょい小太り気味でも。鹿賀丈史って吉敷竹史も演ってたなぁ。全然違うタイプの役なのに。かと言って別の俳優が思い浮かぶわけでもないんですけど。ただ、誰の声が良いか、と言われたら、私は安原義人の声で読んでいます。良い声ですよ、あの人は。知らぬ?メル・ギブソンとかミッキー・ロークの声を当てている人ですよ。あ、でも最近は持ち役制度が崩れているから、作品によっては違う人ってことがあるなぁ。でも、一番合っているのは安原義人だと思いますね。石丸「ジャッキー・チェン&兜甲児」博也の声を、もぉちょっと落ちつかせた感じの声。『キャッツ・アイ』のトシの声、と言っても古すぎて分からんか。俳優としてなら、『ジャングル』というドラマ(そう言えば、このドラマも鹿賀丈史主演やったな)にレギュラー出演していましたよ。


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