ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

なにわのアホぢから

[編著]中島らも  1992年復刻


吉川英治文学新人賞受賞第1作

 バカにしてたら、アホうつすぞ!なにわ全開、ジョークの決定版!……1冊読み通して、何のためにもならず、とにかく馬鹿馬鹿しいだけという本はそうそうない。というわけで、何も考えずに読んでいただいたら結構、読んだ後に何も残りません。素晴らしい。中島らもはこうでなくっちゃ。いや、『ガダラの豚』も面白かったけどね。でも、こういう徹底的に馬鹿馬鹿しいものを追求してこそ中島らもでしょう、やっぱり。もっとも、この本は中島らもだけじゃなくて天才漫画家ひさうちみちお(こいつは以前某TV番組で「汚い言葉を書け」という問い(なんちゅう問いや)に対し、「汁」と答えた天才である)とかも参加しているんである。お薦めです。

 しかし、こういう内容って、関西圏以外の人にはどうなんでしょうか。「沈没都市除霊紀行 大阪の悪霊」とか「大阪もんが安全で気持ちよく東京人になる方法」とか……面白いんでしょうか。最近は関西圏でも、この手の笑いを受け付けない人が多いし、これもひとつの伝統芸能みたいな感じになっていくんでしょうか。吉本新喜劇でも笑いの質はどんどん変わっていて、あんまり泥臭くなくなっているしなぁ。まぁ、今から昔の雰囲気に戻したところでお客さんには受けへんやろうし、笑いってなもんは時代と共に変わっていかなきゃ話にならんとは分かっているんやけど(特に吉本は松竹と違うからなぁ……って、その違いが分かるのも関西の人間だけか)。

 例えば、日本人はみんな出っ歯でメガネでカメラをぶら下げているとか、中国人はみんな自転車に乗っているとか、イタリア人はスケベとか、そういった偏見に基づくステレオタイプというものは排除されるべきなんでしょうか。「九州の人は男らしい」と言ったとき、必ず差別だと声を上げる人がいますが、九州にだって男らしくない男も、当然女らしい女も女らしくない女もいることは重々承知の上で、ステレオタイプそのものを楽しんでいるということが理解できないのでしょうか。そもそも差別を伴わない笑いなんて存在しないと思うんですが、いかがなもんでしょうか。確かに関西の笑いは、エグ味がきついとは思いますが、この豊かさを味わえないのは不幸だと思います。って、そんなに真面目に語るような本じゃないんですけどね。


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