ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

合本・青春殺人事件

辻真先  1990年発売


凸凹カップルが活躍するヤング・アダルト向けシリーズ集大成

 辻真先といえば、私の世代ならテレビマンガ(敢えてアニメとは言いません)の脚本家として認識している人である。ここに代表作を挙げようかと思ったが、数が多すぎたので断念した。子供の頃に見たテレビマンガのうち、かなりの作品が、この人の手になるもののはずだ。それらを夢中になって見ることで、かなり豊かな情操教育を受けられたはずで、感謝してもしきれない。どうもありがとう。で、この人は推理作家としても活躍していて、赤川次郎の『三毛猫ホームズの推理』に始まるシリーズに対抗して『迷犬ルパンの名推理』からシリーズを始めるなどしているのだが、やっぱり推理小説の醍醐味はフーダニット(誰がやったのか)でしょ、と考えていたようで、「えっ!あんたが犯人だったの!」という驚きにすべてを賭ける!とばかりに『仮題・中学殺人事件』(1972)、『盗作・高校殺人事件』(1976)、『改訂・受験殺人事件』(1977)という、可能キリコ(あだ名はスーパー)と牧薩次(あだ名はポテト、ついでに辻真先のアナグラム)を主人公とするシリーズを物しているのである。このシリーズで、19世紀推理小説の黎明期に盛んに追求された「超意外な犯人もの」をやっているわけですね。

 『仮題・中学殺人事件』では、中学生のスーパーとポテトが、人気漫画家にまつわるアリバイ事件と学校の健康診断時における密室殺人という2つの事件に遭遇。『盗作・高校殺人事件』は、ポテトが新宿で遭遇した幽霊騒ぎ。その時に知り合った友人の故郷である温泉街に赴いたら、そこでも幽霊騒ぎがあり、続いて、昔話を彷彿とさせる事件が起きる。『改訂・受験殺人事件』では、ポテトとスーパーが通う学校で事件発生。死んだのは学校きっての秀才の誉れ高い生徒なのだが、飛び降りた4時間後に地面に叩きつけられたという不可解な事実が判明する。彼らは出版社の社長から事件を小説にしてくれと依頼されるが、その社長の息子が第2の事件の被害者になってしまう。

 というようなもので、どこが「超意外な犯人もの」なのかと言われるとチト困りますが、それをバラすわけにはいきませんからね。で、この本は、これら3長編に1短編を加え、プロローグとエピローグを付け足して合本にしたもの。「意外な犯人」の設定で勝負しているので、ちょっと読みにくいところがあったり、いささかコクが足りないとか、そんな弱点はあるものの、軽く読めて面白いですよ。それにしても、主役に中学生を据えているんですけど、その会話のセンスが読んでいてたまらん。70年代って、こんなんやったか?なんか、オッサンが無理やり「ヤングのナウなフィーリング」を再現しようとしているようで、こっ恥ずかしいこと、この上なし。そもそも「スーパー」だの「ポテト」だのというあだ名からして耐えられないものがありますね。これの延長線上に吉田美和の、あの醜悪な喋りがあるのかと思うと、憂鬱になる今日この頃である。


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