ダイキチ☆デラックス〜音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

ジャズ喫茶マスター、こだわりの名盤

鎌田竜也+JAZZ MAGAZINE  1995年


これ一冊あれば,間違いのないスタートが切れます

 実際にジャズを聴く人は少ないけれど、聴いてみたい人は多いらしく、「ジャズって何を聴けばいいの?」と尋ねられることが多い。でもねぇ、正直なところ困るのよね、この質問。いや、私も散々訊ねてきた方ですから、訊きたくなる気持ちはイヤというほど分かるんですけどね。私自身好きなジャズを好きになってくれる人が増えるのは嬉しいことなんですが、その人が今までどんな音楽を聞いてきたか、ジャズにどんなものを求めているか、そういうことを把握して、それにピッタリのアルバムを選び出すなんて、実際の話、無理なんですよ。でも、ちゃんと応えてあげたい心優しくジェントルな私としては、黙ってこの本を差し出すことにしているのです。

 日本のジャズを支えてきたジャズ喫茶。ジャズを愛し、ジャズとともに生きてきた168軒のジャズ喫茶のマスターが思い入れとこだわりで選んだアルバム・ベストテンを掲載。集計結果上位200枚をジャケット写真、データ付で紹介しています。

 名世間で言う名盤とやらの最大公約数だから、とりあえずハズレはないはず。数あるガイド本の中でも、最も信頼が置けて無難なものです。無難というのは、消極的で面白味がないということでもあるのかも知れませんが、結局のところ面白味なんてものは自分で探していく以外ないんですよね。だから、人に教えるときは、平凡で当たり前のものを示してあげればいいのだ、と思う今日この頃です。「教育とは、平凡への強制である」というわけです。で、この本に紹介されているアルバムを何枚か聞いてみて、その結果、ジャズから離れていくか、王道ファンになるか、外道マニアになるかは神のみぞ知るってところでして、無責任な言い方ですが、こればっかりは蓋を開けてみないと分からない。

 ジャズに限ったことではありませんが、ランキング上位のアルバムを聴いてみて、やがて物足りなくなって下位のもの、ランキング外のものに手を出して、またランキング上位のものに帰ってきて、その繰り返しで自分の好みというものが分かってくるという、辛気臭い手順を踏めた人だけが、「趣味を楽しむ」という境地に辿り着けるのでしょうね。ジャズ喫茶店主のエッセイなんてものも載っていますけど、こんなのは読まなくてよろしい。この本には、年寄りの思い入れ過多で、ジャズの閉鎖性丸出しで、読むと気分が悪くなりますから、初心者には百害あって一利なしです。


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