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ダイキチデラックス

封印作品の謎

安藤健二  2004年


封印は解かれるためにある!

 DVDや衛星放送が普及し、あらゆる「埋もれた名作」が発掘、復刻されている21世紀。しかしその片隅では、存在のみ知られながら、いまだ決して目にすることができない一部の作品群が、ひそかに語り継がれ続けている。これらの物語は、いったいなぜ「封印」されてしまったのか?誰が、いつ、どこで、「封印」を決めたのか……?大学生時代、ネット上での酒鬼薔薇聖斗の顔写真公表の動きに関わった経験も持つ著者が、戦後の特撮、マンガ、ゲームを中心に、関係者の証言を徹底的に集め、その謎に迫る。必読の新世代ルポルタージュ。

 というわけで、ここで挙げられているのは『ウルトラセブン』第12話「遊星より愛をこめて」、『怪奇大作戦』第24話「狂鬼人間」、映画『ノストラダムスの大予言』『ブラックジャック』第41話「植物人間」、第58話「快楽の座」、埼玉県監修のO157予防ゲームの5つ。最後のゲーム以外は、マニアなら知っていて当然の封印作品なわけですが、「こんなのや、こんなのが放送禁止なんだよ」と興味本位に羅列しただけではなくて(それはそれで興味あるけれど、そういうのが読みたい初心者には天野ミチヒロの『放送禁止映像大全』がいいかな)、何故封印されたのか、封印に動いた圧力、社会的な背景や封印した側の思惑まで突っ込んであるのが面白い。一旦作って世に出したものを封印するからには、何か歪んだ事情が横たわっているというのは容易に想像できるけれど、そんな想像をはるかに超える嫌な事実が掘り起こされております。

 特に円谷プロの不可解な動きというのは、どす黒い何かを感じさせて薄ら寒いくらいです。なんなんだろうね、こりゃ。「狂鬼人間」があるとないとじゃ『怪奇大作戦』全体の評価がまるで変わっちゃうじゃないか。ちょっと前までは、さすがにテレビでの再放送はされなくても、ビデオにはバッチリ収録されていたのに、今では何の説明もなく「欠番となっています」の一言で封印ですからね。古いミステリでも「表現が不適切」という理由で、出版社が勝手に文章を改竄したりする例がありますが、「臭いものには蓋をしろ」とか「寝た子を起こすな」とかいった浅薄なレベルでおたおたしているだけで、「芸術か差別か」という本質的なところまで考えた対応とはとても思えない。このままいくと恐るべき検閲社会が到来してしまうのは明白なのに、表現を飯の種にしているマスコミどもは危機感を覚えないのかね。

 続編『封印作品の謎 2』では、『キャンディ・キャンディ』、『ジャングル黒べえ』、『オバケのQ太郎』『サンダーマスク』が取り上げられています。あわせて読んで考えよう!


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