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ダイキチデラックス

スイーツレシピで謎解きを~推理が言えない少女と保健室の眠り姫~

友井羊  2016年


涙腺決壊、号泣必至

 沢村菓奈という狙い過ぎなネーミングの、いわゆるJK、高校1年生女子が主人公。友達もほとんどおらず、地味に暮らす彼女に、唯一、普通に接してくれるのは同じクラスの天野真雪。イケメンなのだが、洋菓子大好き超甘党、なのに肥りもしないあたりがムカつくが、食べるのも作るのもプロ級なため、女子が一生懸命作って持ってきたチョコを平然と腐し、正しい作り方なんぞを滔々と述べだす頭のおかしい奴である。ある日、真雪が保健室登校を続ける「保健室の眠り姫」こと篠田悠姫子のために作ったチョコがなくなり、菓奈に容疑がかかってしまう……。

 というような、あらすじを読んだら、「あぁ、真雪は変わり者だけど推理力が抜群で、菓奈を助けてめでたしめでたしなのね」と思うのが普通。スイーツって言い方もムカつく(いつ頃から言われ出したのか覚えてないが、なんでデザートじゃダメなわけ?)。副題の「推理が言えない」ってのも気になる(「推理を言えない」だろ)。「保健室の眠り姫」なんていうダサすぎるネーミングセンスにも辟易だし、そもそも、こんな表紙を見て、読んでみようなんて思う奴の気が知れない。少なくとも、四捨五入したら成人するような歳で読む本じゃあない。しかし、私は何故か読んだのである。著者は第10回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞を受賞してデビューしたらしいが、このときは、その授賞作も読んでなかったのに。おそらく大した期待もせず、軽く読もうと思っただけだったのだと思うが、読んでビックリしちまったのである。

 スイーツ(だから、デザートでええやん)にも興味はないし、スイーツの知識を生かした推理の部分にも大して感心はしなかった。なのに、ここで紹介してるのは、とにかく泣けて泣けて仕方なかったからである。歳も取ったし、当時、鬱気味だったから余計に涙もろかったのかも知れんが、とにかく泣いた。ここには書いていない、主人公のある属性(?)がカギだ。その属性自体はともかく、それに対する登場人物達の接し方というか何というか、うまく言えんのだが、なんかそういったようなものに、こんなに心を揺さぶられるなんて。涙で心が洗われたね。内容についても、いろんな意味でいい方向に裏切られたし、とにかく読んでよかった。著者に謝りたい。私が悪うございました。すみません。一人でも多くの、心優しい人に読んでほしいと思って、ここに紹介させていただきました。私のサイトなんぞを読んでいる奇特な方々は、みんな心優しいだろうから。




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