当代随一のアンソロジスト、分かっている男、日下三蔵による日本SF傑作選の第4弾。SF映画には抵抗がない(むしろ好き)だが、SF小説には手が出ない。SF小説って哲学の領域に踏み込み過ぎて、素直かつ単純に楽しませてくれないからだ。それと、現在のテクノロジーで説明できないようなものを説明しようとしている文章の読みにくさ。何を言ってるのか分からんし、分かったところで大したことはないという虚しさ。やっぱりSFってのは、映像で見せてくれた方が面白いと思う。
その点、この平井和正集に収められた作品群は、SFではありながらも、そんなに理屈っぽくもなく、て言うか、あんまりSFだなぁと思わせないところが素晴らしい。そりゃサイボーグだの超能力だのは出てくるけれど、そういうのは主たる要素ではなくて、メインは人間の心。執念とか怨念とか、主としてマイナスの感情。人間って、どうしてこんなに駄目なんだ! という作者の怒り、嘆き、絶望が聞こえてくる。ハードボイルドにどっぷり浸かってる人や、昭和(特に1960~1970年代)の刑事ドラマが好きだった人なら、ハートを鷲づかみにされること請け合い。どれもこれも傑作ぞろい(連作である「サイボーグ・ブルース」は全篇収録されている。さすが分かっている男、日下三蔵)なので、一家に一冊備えておくべき名著である。
なお、この日本SF傑作選は、他に筒井康隆、小松左京、眉村卓、光瀬龍、半村良が第一期分として出ている。小松左京の巻なんて、あの長編『継ぐのは誰か?』をまるごと入れるという無茶苦茶な編集(褒めてます)。さすが分かっている男、日下三蔵。全部揃えて並べると、表紙のデザインの美しさも際立って、オタク心も大満足。SFの良い読者とは言えない私にも、これらなら読んでみようと思わせる好シリーズである。