ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

謎解き名作ミステリ講座

佳多山大地  2011年


シンプルなデザインを楽しむ

 京都の某私立大学(って花園大学じゃないの?)での講義をまとめたもの。やるじゃねえか某私立大学。私は京都の私立大学であるR大学の文学部文学科日本文学専攻という、この上なく就職に不利で、将来クソの役にも立たないところに通っていたが、推理小説を扱う講義なんてなかった。そんなもの語れる教授は存在しなかったし、そもそも明治より新しい時代を扱うゼミもなかったのである。この本に載っている講義が始まったのは2005年度(ということは平成17年度ですね)ということで、私が大学を卒業してから15年も経つと、こういう洒落た大学も現れるのだなぁと羨ましがることしきりなのである。

 この講座で俎上に上るのは、古典中の古典がほとんどということで、最近の大学生、しかも推理小説を扱う講座を聞こうなんて人たちが、これらの本を読んでないなんてホントなの? と少し訝しく思えたりもする。しかし、学生たちは、小学校の頃にポプラ社の少年探偵団シリーズも読んだことがない(そもそも図書館に置いてなかった)と聞いて「正直、それは嘘だろう、と思った」と書いてあったし(私も驚いた。ちなみに著者は、新人類世代である私の3歳年下、団塊ジュニア世代である)、そんなもんなのかも知れん。「正統的教養」などというものは死んで久しいのだね。

 さて、この本は、単なるブックガイドなどではなく、新たな解釈の切り口を提示するなど、なかなかに興味深い内容(なんと、呉智英の名前まで出てくる!)なのだが、いかんせん講義内容をまとめたものだけに、深みという点で物足りないのも事実。もっと聞きたい、もっと読みたい、というのが無い物ねだりなのは重々承知しているのだが、何とももったいない気はする。でも、こんな講義を聞けた学生たちは、さぞ楽しい大学生活だったろうな。つくづく羨ましい。


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