なんと戦争が終わって2年しか経っていない1947(昭和22)年に創刊したスイングジャーナルは、2010(平成22)年に姿を消した。一時期、私も読んでいたけれど、ぶっちゃけ中身は面白くもなんともなかったし、よほどのマニアが惰性で買ってるんだろうなぁと思わせるだけの雑誌だった。そりゃジャズの話題だけで月刊誌をもたせようなんて、いくらなんでも無理があるわな。面白味があるのは、年間ベスト企画とか、たまに出る別冊の方だった。
この本が出たのは、1974(昭和49)年。バリバリのLPレコード時代で、その時点で入手不可能、あるいは極めて困難な「幻の名盤」を特集したもので、これを片手に中古レコード店を回るマニアが多かったと言われている。まぁ、多かったって言ったって、実際には、ごく少数のマニアなんでしょうけれど。CD時代に入った1993(平成5)年には『新・幻の名盤読本』が出たが、アルバムを少々入れ替えただけで、大半はレビューの使い回し。つくづくジャズ評論家なんてものは楽な商売で結構だと思う。まぁ、今となっては2冊とも「こんな時代もあったねぇ」程度のものでしかない。て言うか、こういう特集が成立するという時点で、ジャズという音楽が所詮過去のモノでしかなく、現在進行形のジャズだの未来のジャズだのと言ったものは実在しない与太であるということを証明してしまっているのではないか。
じゃあ、この本がつまらん紙屑なのかと言うと、そうではない。広告が面白いのである。録画されていた昔のテレビドラマを見るとき、本編よりもCMの方が意外と面白いのと同じで、ここに載っている広告が実に素晴らしい。ソニーのカセットテープが、60分だと600円、90分だと900円、120分だと1,200円だったのを見て、これノーマルテープの値段じゃないよな、て言うかノーマルテープって何? って訊かれるかとか、広告紙面のデザインが洗練とは別方向のサイケ調なのが時代を感じさせて素晴らしいとか、そういったところに価値がある。本来の楽しみ方とは違うかもしれないが、ガイド本としては使えない以上、こういうところで楽しまなきゃダメなのだ。