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ダイキチデラックス

ムトゥ 踊るマハラジャ MUTHU

[監督]K・S・ラヴァクマール [出演]ラジニカーント、ミーナ  1995年


これぞ目で見る極楽浄土

 南インド、タミルナードゥ州。ムトゥことインドのスーパースター、ラジニカーントは大地主サラットバーブの屋敷で働く人気者の馬車使い兼用心棒兼召使(それって、どんな奴だ)。そんなある日、独身のサラットバーブは旅回りの女優ミーナにひと目ぼれ、トラブルに巻き込まれたミーナを屋敷に連れ帰るようムトゥに命令します。カースト制もなんのその、サラットバーブは、母の兄で大地主の座を狙う悪党の叔父ラーダー・ラヴィの娘パドミニと結婚を迫られている身ながら、ミーナに思いを寄せてしまったのだ。そんな事情も知らず、大騒動の道中でいい仲になるムトゥとミーナ。これを知ったラーダーは屋敷に置く手下のポンナーンバラムを使って、ムトゥが嫌がるミーナに無理やり言い寄っているとサラットバーブに吹き込む。嫉妬に怒り狂ったサラットバーブに屋敷を叩き出されたムトゥだが……。

 というストーリーですが、そんなもん完璧に吹っ飛ばすオーディオ&ビジュアル・ショック!ここまでスゴイ映画は、なかなか見られませんよ。上映時間166分を、ただただ楽しんでください。なにしろ、ちょっと目を離すと踊っています。途中でトイレに立って、帰ってきても、まだ踊っています。しかも、どこから集めたのかと思うほどの大人数で時空を超えて衣装も替えまくって踊っていますから、ちょっとした酩酊気分に浸れます。この踊りを見ていると、ストーリーなんかどうでもよくなってしまいますし、実際、どうでもいいんです。ムトゥの出生の秘密なんて、別に誰も知りたくないんです。ハッピーな歌とダンスで、みんな幸せなラストを迎えられれば、何も問題はないのです。

 本作が大ヒットしたおかげで、次から次へとインド映画が輸入され、あの頃、ちょっとしたブームになったものですから、いろいろ見ましたな。『ラジュー出世する』……奇麗な女の子が出てくると突然金粉入りの風が吹いてチャララララ~ンという、いまどき漫画でも使わない大げさな演出が狂っていて笑える。『ダラパティ 踊るゴッドファーザー』……フィルム・ノワールなんでしょうけど、やっぱり歌って踊っている。大体タイトルからしてふざけている(って付けたのは日本人やけどね)。踊るか?ゴッドファーザーが。このセンスはアダルトビデオのタイトルに近いぞ。このように、それぞれ笑えるんですが、やっぱり、このムトゥは桁違いです。この3時間もの映画を私は3回見ていますからね。しかも、毎回まったく飽きず、最後まで楽しみ切っています。それにしても主演のラジニカーントってオッサン、やたらかっこいいんですよ。本作公開時点で46歳という脂もギトギトに乗り切って、精力絶倫を絵に描いたような色黒ひげ面のスーパースター。カメラ目線でウインクしまくり、インド流セクシーをガンガン放っています。あのかっこよさは、ある種、宮内洋に通じるものがあると思うのは俺だけか?あんなにタオルをかっこよく、しかも「フォンフォン!」というカンフー映画みたいなSE付きで扱える奴は世界でスーパースター・ラジニカーントだけだ!


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