ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

007/私を愛したスパイ THE SPY WHO LOVED ME

[監督]ルイス・ギルバート [出演]ロジャー・ムーア、バーバラ・バック、クルト・ユルゲンス  1977年


シリーズの総力を結集した度肝抜くスーパースケール巨編

 3代目ボンド、ロジャー・ムーアの最高傑作。2代目ボンド、ジョージ・レイゼンビーが不評だったので、1回だけショーン・コネリーが復帰、そして後を引き継いだのが、このロジャー・ムーアである。レイゼンビーの『女王陛下の007』はマニアに人気が高く、確かにピーター・ハント監督の切れ味鋭いアクション演出もルイ・アームストロングの主題歌も良かったのですが、敵が思い切り間抜けで、そのくせラストが暗すぎていけません。そもそもボンドの結婚相手が、『おしゃれ(秘)探偵』で人気があったとはいえ、ダイアナ・リグなんてブスで良いのか。どうも外国人の好みはよく分からない。本作は、シリーズ10作記念超大作なのだが、ボンドガールが不細工なのが残念だ。

 地中海で、核ミサイルを搭載した英潜水艦「レンジャー」が突如消息を絶った。アルプスの山小屋でおねえちゃんとイチャイチャしていたボンドは緊急指令を受けた。何者かが戦略用に原潜航跡追跡システムを開発したらしい。早速ボンドは、このシステムのマイクロ・フィルムを追ってエジプトに飛んだ。一方、こちらもベッドでイチャイチャしていたKGBの女スパイ、トリプルXことバーバラ・バックも、最近行方不明になったソ連潜水艦「ポチョムキン」の探索を命じられる。その頃、海運王で、地中海に本拠地を持つクルト・ユルゲンスは、マイクロ・フィルムを持ち出した裏切者を殺すため、ジョーズことリチャード・キールを差し向けていた。ユルゲンスは米ソを核攻撃し、世界を壊滅させ、海の世界を作ろうとしていたのだ。マイクロ・フィルムを巡って敵対していたボンドとバーバラだったが、2人に共通の敵がいると分かり、デタントという時代背景もあって共同で任務に当たることとなる。しかし、事件の直前、オーストリアでボンドに差し向けられ、返り討ちにあったソ連の殺し屋が彼女の恋人であったため、バーバラは、この任務が終わったらボンドを殺すと宣言する……。

 話の筋は、イギリスとソ連の原子力潜水艦が次々と奪われるということで、『007は二度死ぬ』の宇宙船を原子力潜水艦に置き換えただけですが、ロジャー・ムーアも3本目のボンド映画ということで乗りに乗っているし、新ボンド・カー、ロータス・エスプリはスーパーカーブームに乗ってトンデモナイ大活躍するし、次作『ムーンレイカー』にも登場する名悪役ジョーズの鋼鉄の入れ歯も登場するし、ということで、なかなか見所は盛り沢山なのです。なお、ジョーズとの対決は『ロシアより愛をこめて』のロバート・ショウとのシーンのパロディになっています。ただ、やっぱりボンドガールが不細工。どうもムーア時代のボンドガールは、ブリット・エクランドといい、モード・アダムスといい、グレイス・ジョーンズといい当たりが少ない気がするぞ。見るに値するのは『死ぬのは奴らだ』のジェーン・セイモア、『ユア・アイズ・オンリー』のキャロル・ブーケくらいじゃないか。もっとも本作ではバーバラ・バックの失点を挽回して余りある悪役、クルト・ユルゲンスの情婦ナオミ役のキャロライン・マンローがヘリコプターに乗って頑張っているので要チェックです。


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