ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

聖龍伝説

[出演]安達祐実、鳥羽潤、片岡鶴太郎、SONNY千葉  1996年


さあ、懺悔の時間だよ

 日本テレビ土曜21時に放送される作品は、どれもこれも狂っていた。狂い始めたのは同じく安達祐美主演の『家なき子』あたりからか?堤幸彦の演出が狂っていた『金田一少年の事件簿』、マッチの主題歌は良かったが中身はスカスカ、ただのブス女でしかない木村佳乃も出ていた『銀狼怪奇ファイル』、ともさかりえ、鈴木紗理奈、篠原ともえ、遠藤久美子、知念里奈という微妙なメンツを集め、ラストには登場人物が全滅しちまう『FIVE』(MOON CHILDの主題歌は良かった)なんてものもあったな。

 さて、これは伝説の世界最強の中国拳法「聖龍拳」の伝承者、冴木聖羅(安達祐実)が、毎回毎回、伝説の秘宝「天使の涙」(不老不死のお薬)の鍵となる5つの水晶をめぐって、聖龍拳と対をなす拳法「幻龍拳」の刺客たちと戦いを繰り広げるカンフー・アクション・ドラマ。学園ドラマみたいな顔をしながら、なんだかんだで毎週毎週人がバタバタ死ぬ潤いのない世界。行方不明の母親が記憶喪失でどうとか、秘宝がどうとかいう謎がからむのだが、はっきり言ってストーリーなんか追っていたら馬鹿馬鹿しいだけです。幻龍四天王の翔影、安珍、静珍、百舌、幻龍三鬼神の老鬼、流法、雷神といったキャラクターが続々登場、それぞれが秘孔を突いたり闘気を放ったりと『北斗の拳』まるだしの技で戦い、意外な正体だのなんだのを隠し持ちつつ、やっぱりバタバタと死んでいきます。やっと最後の敵、総帥が出てきたかと思ったら、いまどき少女漫画でもやらないような意外な設定のラスボスが登場して、観客は唖然呆然。しかも、すべての謎が解けてみれば、今までの死者は一体なんだったのだと人生の無意味さに滂沱の涙という情けなさ。こんなに面白いドラマがあっていいのでしょうか。

 なにしろ意外な展開の連続であることは保証しますが、実はただの思いつきで書き飛ばしているのじゃないかと邪推せざるを得ない超展開。おまけに世界最強の拳法が超スローモー、ただでさえ強く見えない安達祐美を全然強そうに演出しないスタッフの意気込みもさることながら、そのアクションセンスのなさには二代目スケバン刑事、南野陽子もビックリである。父親役はサニー千葉(「千葉真一」じゃないあたりが泣かせる)なのに……。このドラマの楽しみ方は、ひたすら、その世界に浸るのみ。安達の決め台詞「さあ、懺悔の時間だよ」に笑うもよし、ケイン・コスギの珍妙演技「俺の拳が泣いてるぜ!」に笑うもよし(この人は、いつになったら日本語が上達するのだろうか……アグネス・チャンみたいに下手なままで行くのだろうか)、無意味かつ無駄に豪華なゲストの変な役回りと立ち回りに笑うもよし、『五星戦隊ダイレンジャー』みたいに、いちいち技の名前が画面に大写しになる(しかも、ゲージツ家気取りの鶴太郎の直筆)のを笑うもよし、って笑ってばっかりじゃねぇか。とにかく一見の価値ある怪作。


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