ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

秘密結社鷹の爪 THE MOVIE2 私を愛した黒烏龍茶

[監督、出演]FROGMAN  2008年


両手を拝借、たーかーのーつーめー♪

 TOHO シネマズのマナームービーでおなじみ、貧乏ベンチャー秘密結社「鷹の爪団」。彼らは、DXカンパニーの社長にして世界各国で活躍する正義の味方、宿敵デラックスファイターの邪魔の入らないネット世界での世界征服を思いつく。そして、天才レオナルド博士(熊ではない)の発明した「ネットの中に入るマシン」を始動させ、見事ネット世界への突入を果たす。そこは一面、どこかの映画で見たような緑色のグリッド線で構築された世界だった。団員たちはデラックスファイターの拠点をサイバー攻撃しようともくろむも返り討ちにあい、「サイバー犯罪特捜同好会」の美津子という謎の美女に助けられる。美津子によると、Mr.Aという男が、史上最悪の買収プログラム「ハゲタカ」を使って、日本の大企業の株価の急落と株の買い占めという操作を行っており、DXカンパニーや鷹の爪団秘密基地までもが乗っ取られてしまう。基地を追い出された団員達は、仕方なく吉田君の故郷、島根県へ向かう。そこで逆襲の機会を伺う一同だったが、うっかり島根県を忘れていたことに気付いたMr.Aの日本買収計画は最終段階に入っていた……。

 脱力感満点のフラッシュアニメの劇場版第2作。予算のかかる3DCGシーンなどがあるたびに急激に低下して資金難に陥ったことを示すバジェット・ゲージ・システム(以降のシーンで背景やキャラクターが手抜きになるなど品質が低下する)や、それを乗り越えるための露骨な宣伝であるプロダクト・プレイスメントなど、仕掛け満載のギャグアニメではあるが、前作『総統は二度死ぬ』ではTV版で一度死んだ後サイボーグとなって復活した「うんこ野郎」フェンダーミラー将軍と、次作『鷹の爪.jpは永遠に』では第45代アメリカ合衆国大統領オババと軍需産業サドルストーン・コーポレーションと戦う理由として、鷹の爪団のモットー「人に地球に優しい世界征服」、「くだらん国境を取り払い、世界をひとつに結び、疑いやいがみ合いや傷つけ合うことなく、格差をなくし、誰の子供も自分の子供のように愛する世界にするための世界征服」があるのが素晴らしい。もっとも成り行きで戦うことになったようにしか見えないし、声高に感動を押し付けようなんて作品でもない(ほろ酔い気分でポテチ片手に見るのがベスト)ので、忘れていてもいい設定なのかもしれないけれど、やはり長編映画ともなるとギャグだけで押し通すこともできず、本作ラストでは少々ほろっとさせたりするのが悲しいやら微笑ましいやら、商業映画って大変なのだなぁと感じさせてくれる。

 それにしても島根県庁というところは素晴らしい。シリーズでさんざんネタにされ、本作でも存在感が薄すぎて唯一乗っ取り忘れられていたなどという設定にされている(最終的には島根県のおかげで世界が救われたりするのだが)のに、吉田君を「しまねSuper大使」に任命したり、特別住民票を交付したり、挙句の果てには「日本で47番目に有名な県」、「いいえ、砂丘はありません」、「定休日じゃないです。人がいないだけです」、「この際、鳥根でもいいです」、「県名より出雲大社の方が有名」、「島根は鳥取の左側です」などという自虐コピーを使ったカレンダーまで作るのだから、他の自治体も見習うべきだ。もっとも固定イメージがないからこその荒業なのだが、それにしても堅苦しいお役所からはなかなか出てこない発想だ。私なんか以前、京都市の新たなキャッチコピーとして「京都で死にたい」という日本人の心の故郷という特質と高齢化社会対応の客層を狙った秀逸な一文を思いついたのに、即座に却下されちゃったもんね。こういうシャレも冒険もできないところに未来はない。それに比べて島根は素晴らしい!妙に受けを狙って滑りまくる事例も多い中、理想的なコラボ企画と言っていいのではないか。羨ましい限りである。


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