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ダイキチデラックス

(秘)必殺現代版 主水の子孫が京都に現れた 仕事人vs暴走族

[監督]石原興 [出演]藤田まこと、三田村邦彦、中条きよし、芦屋小雁  1982年


お遊び企画にしてはキツイ逸品

 必殺スペシャル第3弾。スペシャルですから、お祭り気分でバカバカしくやっちゃうわけです。バカバカしいという意味では第5弾『必殺仕事人意外伝 主水、第七騎兵隊と闘う 大利根ウエスタン月夜』というタイトルからしてバカバカしい、中身はもっとバカバカしい(カウボーイとちょんまげ侍のツーショットというだけで笑えるのに、「Who are you?」「主水」「Bond? James Bond?」「No、 中村主水」というやり取りが絶品)という破壊力抜群の作品も捨てがたくて、結構好きだったりするんですが、その破壊力という点において、やっぱり、この現代版には勝てません。

 生命保険会社「昭和生命」の訪問勧誘員・中村主水、手作りアクセサリーを路上で売る青年・村上秀夫、ピアノ調律師・山田勇次、個人タクシー運転手・長谷川加代の4人は、ごく普通のカラオケ仲間。しかし、彼らの先祖は、それぞれ仕事人として暗躍した中村主水、飾り職人の秀、三味線屋の勇次、何でも屋の加代であった。ある日、主水の顧客・芦屋小雁の妻子が暴走族に襲われ、命を落とす。葬儀を終えた小雁は、女物の洋服を買ったり、河原でスクーターの練習をしたりするなど、不可解な行動を取っていた。小雁の目的は、妻子を殺した暴走族のメンバーに復讐することだった。ある夜、小雁は女装するとスクーターを走らせ、目論み通り近づいてきた暴走族のメンバーを殺そうとする。しかし、復讐は失敗に終わり、逆に殺害される。彼の死体を見つけた警察は女装という格好などから、殺人ではなく変死という扱いをする。一方、小雁は主水を受取人にして、5千万(事故死亡時3倍の特約)という生命保険を自身にかけていた。主水は小雁の保険金を頼み金に、仕事人として、彼ら一家の復讐をすることを仲間に提案する。

 舞台が現代になれば、主水の仕事は警官のような気がするのだけれど、何故か黒縁メガネが泣かせる保険の外交員。勇次はホストにしか見えないし、秀は普段と何も変わらない。皆がカラオケ仲間という設定に時代が偲ばれますが、例によって例の如く罪も無い人たちがヒドイ目にあいます。これが、いかんせん現代劇なんで生々しくてキツイんですよ。芦屋小雁の女装も相当キツイですけれど(いくら夜中とはいえ、これにひっかかる暴走族ってどうかと思う)、同じようなヒドイ目にあっていても、そんなに生々しさを感じさせないという意味で、時代劇というのはファンタジーなのだなぁと再確認してしまいます。もっとも、殺しのシーンでは、勇次がピアノ線でびよよよよ~んと相変わらず物理法則を無視した殺し技を披露したり(そもそもピアノの調律師って、ピアノ線を持ち歩いているものなのか)、秀がただのアクセサリー売りとは思えない華麗なアクションを見せたりしていて、ファンタジーな雰囲気満点ですけどね。そう、現代劇なのにきっちり殺していて、こいつらはバリバリの殺人犯です。現代版にしたからってハングマンにはなってないのがミソですね。でも、よく考えると、ねちねち責めて社会的地位を奪い、バカバカしくやればやるほど惨さ倍増、ある意味死ぬより辛い生き地獄を味あわせるハングマンの拷問に比べれば、あっさり殺してあげる仕事人は、実は慈悲深いのかも知れませんねぇ。そういう意味で、初期のシリーズ、仕置人の精神を受け継いでいるのは、実は仕事人じゃなくてハングマンだったのかも知れませんね。


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