ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

必殺スペシャル春一番 仕事人、京都へ行く 闇討人の謎の首領!

[監督]石原興 [出演]藤田まこと、村上弘明、藤真利子、近藤正臣  1989年


近藤正臣のかっこよさに感激のスペシャル版

 必殺スペシャル第13弾。この当時のスペシャルというと、「(悪い意味で)なんで、この人が?」というようなゲストが出てきて、ろくな演技もせず、自分の持ちネタと、なんにも考えていない奇抜なだけの殺し技を披露して終わりというような作品が連発されてイヤな気分になっていたものです。ちょうど、過去の作品群の再放送があったりした頃で、余計にお粗末さが目立っていたのですね。でも、この作品は違うぞ。

 京都所司代に出向中の北町奉行所同心が、京都御所の改修工事にまつわる不正を暴き、幕府に直訴するため江戸に戻ったが、何者かに命を狙われる。鍛冶屋の政に助けられた同心だったが、結局、妻ともども殺されてしまい、その無念を酌んだ政は、加代と共に京へやって来た。既に裏稼業から足を洗っていた嵯峨野の元締・織本順吉と、その娘で昔馴染みの仕事人・藤真利子の協力を得て、同心殺しの犯人、丹古母鬼馬二一味を見つけ出した政は、京の仕事人・佐藤蛾次郎と共に一味を急襲して鬼馬二を捕らえることに成功する。そして、今回の黒幕「闇討人」の頭目の正体を吐かせようとしたとき、突如現れた般若面の人物に鬼馬二と蛾次郎の不細工コンビを殺されてしまう。その頃、中村主水も京都所司代に出張していた。京都御所改修工事の朝廷側の担当者、貧乏公家の松山おじゃる英太郎に何故か気に入れられた主水は、彼の屋敷勤めになっていたが、政に、般若面が用いた京八流の小太刀を手掛かりに黒幕を探すようアドバイスする。一度は仕事を断った近藤正臣が、京八流の使い手に殺された恋人の敵討ちという条件で一時的に政と手を組むこととなり、二人は標的の京八流の師範を捕らえるのだが……。

 ゲストに黒木香が出ていたりして、「やっぱり……」と思わないでもないですが、久々に仕事師役で近藤正臣が登場、元結(もっとい。髪を結う用具)を使って、渋い仕事を見せてくれます。首を絞められた相手が、必死で解こうとしても「あかんあかん、この元結はちょっとやそっとでは切れへんで」と見事な京都弁(近藤は京都出身)で、凄みを感じさせます。こういう決め台詞がビシッと決まると、関西弁ネイティヴの私としては非常に嬉しい。『暴れ九庵』で古尾谷雅人が使っていた関西弁の決め台詞「ワレ、死んだれや」は酷かったからなぁ。それはさておき、京都を舞台にしているのに、織本順吉だの丹古母鬼馬二だの佐藤蛾次郎だのと、むさいオッサン勢揃いだったのはともかく、哀しい最期を遂げて主水に仕事を決意させる風見章子、おじゃる言葉で公家を好演した松山英太郎(メイクも気色悪くて素晴らしい)といったキャスティングが地味に重厚さを醸し出し、また、脚本もクソ作品連発の便利屋、吉田剛ではなく、スペシャル第8弾『必殺忠臣蔵』の田上雄を起用、主題歌に仕置人の「やがて愛の日が」を使っているあたりにもスタッフの本気具合が見えて好もしい。政を主役に据えることで、硬直していた主水メインの雰囲気も一新、「やればできるじゃないか!」と喜んだのですが、その輝きは、長くは続かなかったのでございます……。


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