ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

ホラー学園πR

[出演]葉山レイコ、磯部恭子、鈴木早智子、土田由美、森川美沙緒  1988年


夜陰に乗じたバカ番組

 こんな番組を覚えている人が、一体この世に何人いるのだろうか。80年代はバブル真っ只中ということで、変な番組が乱立、次から次へと消費されまくっていたから仕方ないけれど、このまま歴史の闇に埋めておくのは忍びないので、一視聴者だった私が、こんな形ででも記録しておいてやろうというものである。これは、テレビ朝日がアイドルやお笑い芸人によるドラマやバラエティを日替わりで放送していた深夜枠「熱帯夜アカデミー」(『カクテル』でおなじみ、ビーチボーイズの「ココモ」をテーマ曲にしていましたな)の中のドラマのひとつ。

 πR学園(円周率×円の半径。円周なら2πRだし、円の面積ならπR2だし、πRの意味は不明)という女子校を舞台に、次々起こる怪事件を女教師と生徒達が解決していくというもので、それだけ聞くとなんだか凄そうですが、中身はバカバカしいという以外に言い表しようがない作品。亡霊、妖怪とのコミュニケーションがテーマで、毎回毎回、この世に未練たらたらの有名人の幽霊が現れて騒動を起こし、こいつらをなんとか成仏させてやるという珍妙かつ無理矢理なストーリーを展開。出てくる幽霊も洋の東西、古今を問わず、バッハ、ジュリアス・シーザー、エルビス・プレスリー、ヒットラー、夏目漱石、アル・カポネ、エリオット・ネス、挙句の果てには光源氏や世之介といった架空の人物までネタにしており、一応ホラーとは銘打っているものの、チープな特撮と下手というのもためらわれるレベルの演技が脱力感満点の仕上がりを見せておりました。要は女教師や女生徒役のアイドル(予備軍)のお色気シーンを楽しむための番組。出演者も、葉山レイコとWinkの鈴木早智子以外は、磯部恭子、土田由美、森川美沙緒と、当時もその後もテレビで見た覚えがない(多分それなりに可愛かったんだろうと思うけれど、今も顔を思い出せない)という、マイナーな人たちを集めており、『オールナイトフジ』だの『夕焼けニャンニャン』だのと大差ない志で作られたことがありありと分かります。ある意味、由緒正しい深夜番組でしたね。

 まぁ、そんな番組だったので、適当に気を抜いて見ていたら、何をトチ狂ったか、突然、レギュラーの女教師(葉山レイコ)はアンドロイドだった!と、ホラーからSFモードに大転換。正直言って唐突以外の何物でもない花火を打ち上げて視聴者の不安と期待を煽っておいて、「何故?」「誰が何の目的で作って学園に送りこんだの?」などという当然の疑問にも答えないというエヴァンゲリオンを10年先取りしたシュールかつ投げやりな展開を見せて、番組は突然終了したのでした。もちろん視聴者は完全に置いてけぼり。伏線なし、フォローなし、しかも、何の効果もなしという荒業よりも、出ている女の子たちのお色気シーンを増強する方が正しかったのではないかと思うのだけれど、このおかげで、私みたいに未だに覚えているボンクラがいるわけですから、当時のスタッフの作戦勝ちなのかも知れません。ソフト化はもちろん、再放送もされない番組の制作者って、何か変わったことでも仕掛けないと、やってられないのかも知れませんねぇ。


copyright©Daikichi_guy 1999-2020  all rights reserved.