ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

ファントム・オブ・パラダイス PHANTOM OF THE PARADISE

[監督]ブライアン・デ・パルマ [出演]ポール・ウィリアムス、ジェシカ・ハーパー 1974年


魂を返せ!!恋人を返せ!! 悲痛な彼の叫びは強烈なロックに散りくだかれた

 あの劇団四季で有名な(いや、ミステリの古典『黄色い部屋の秘密』『黒衣婦人の香り』二部作で有名なガストン・ルルー原作の、と紹介すべきか)『オペラ座の怪人』をロック・ミュージカルにした超有名カルト映画です。一時は同じロック・ミュージカルである『ロッキー・ホラー・ショー』との二本立てが名画座の黄金プログラムで、それぞれのファンが「こっちが最高だ!」「いや、こっちだ!」と憎しみをぶつけあう場面もよく見られたとか。そんな熱狂的なファンを生むのも納得の、変態監督ブライアン・デ・パルマのイケイケ度満点の佳作です。

 大手レコード会社「デス・レコード」の社長にして、ロックのため悪魔に魂を売った男スワン。彼は、天才的なロック作家(オタクなソングライターとも言う)ウィンスローが作った叙事詩的なロックのカンタータを横取りし、彼が新しく築いた夢の音楽宮殿「パラダイス劇場」のこけらおとしとして公演する考えだった。口車に乗せられ、曲を渡してしまうウィンスロー。スワンは、麻薬所持の罪をでっち上げ、ウィンスローを刑務所に投獄する。更にスワンの息のかかった刑務所内の歯科医の手で金属の総入歯の醜い顔にされた。復讐を誓ったウィンスローは刑務所から脱走し、スワンのレコード工場に忍び込み、機械を壊そうとしたが、不運にもレコード・プレス機にまき込まれ顔の半分をつぶされたばかりでなく、ガードマンの拳銃で射たれ、河へ飛びこんだ。一命はとりとめたものの、彼の顔はふた目と見られぬ形相となり、一夜にしてファントムと化した。ウィンスローはパラダイス劇場の天井桟敷に潜み、「パラダイスの怪人」として暗躍を開始する……。

 やっぱりデ・パルマは『アンタッチャブル』とか『ミッション・インポッシブル』なんて普通の映画ではなく、『キャリー』『殺しのドレス』『ミッドナイトクロス』、そして本作のような変態映画で才能を発揮する監督ですね。何度も何度もだまされるウィンスローがバカにしか見えず、あんまり同情もできないのですが、最終的には曲は奪われ、惚れ込んだジェシカ・ハーパー(青いアイリスを回すのよ!)には裏切られ、挙句の果てには(ここから先は映画を見てね)になってしまうに至っては、可哀想を通り越して唖然呆然、ただ見守ってやることしかできません。特にジェシカ・ハーパーは、ウィンスローが素質を見出し、犯されそうになるところを救ってやり、主役に抜擢させるためにあんなこと(どんなことかは映画を見てね)までしてやるにもかかわらず、女というのは、こういうことを平気で出来るのだな、と人生について深く考えたりしてしまうほどに手酷い仕打ちをしてくれます。こんな奴は『サスペリア』で魔女に呪われて死んでしまえばよかったのだ、と思います。それにしても怪人のマスクのデザインが良いですね。フクロウをモチーフにデザインされたそうですが、これはかなりイカシてます。こんなメットでバイクに乗ろうという奴はいないかしら。ちなみに、本作のスワンをモデルに造形されたのが『ルパン三世(ルパンvs複製人間)』のマモーだというのは有名な話。あの「とっちゃん坊や」のルーツは、ここにあったのですね。


copyright©Daikichi_guy 1999-2020  all rights reserved.