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モーレツ!と言われるとガソリンより先に「しごき教室」と言ってしまう私はべたべたの関西人。というようなことはさておき、『クレヨンしんちゃん』の劇場映画シリーズの9作目、これこそ2001年最高の傑作。もちろん洋画・邦画併せた中での最高傑作である。
昔懐かしいテレビ番組や映画、暮らし等が再現された「20世紀博」というテーマパークが日本各地で開催されていた。毎日付き合わされていい加減辟易しているしんのすけら子供達を尻目に、ひろしやみさえら大人達は、懐かしさに触れて20世紀博を満喫する。街中でも昔の自動車やレコード、白黒テレビといった古いものが売れるようになり、帰宅しても大人達は昔の懐かしい特撮番組やアニメ番組のビデオに取り憑かれたかのように夢中になる。ある晩、テレビで20世紀博から「明日、お迎えにあがります」という放送があり、これを見た大人達は突然人が変わったようになり、すぐさま眠りについてしまった。翌朝、町中の大人達に異変が起こっていた。大人達は大人であることを放棄し、迎えに来たオート三輪(ダイハツ・ミゼット、ダイハツ・CO型)に乗り込み、姿を消してしまう。そしてその夜、ラジオから「イエスタデイ・ワンスモア」と名乗る秘密結社のリーダーであるケンとチャコが、見捨てられた子供たちに投降するよう呼びかけてきた。絶望の21世紀を捨て、希望に満ち溢れていた20世紀を永遠に存続させよう……。実はケンたちは、21世紀=未来に希望を持てなくなった大人たちを洗脳し、大人だけの楽園『オトナ帝国』建設を企んでいたのだ!
この映画のメインターゲットは、もちろん子供なのだが、ドラマとしては子供なんか置いてけぼり、主役をしんちゃんの父ひろしに演じさせ、子供を連れてきた親たちに向けて発信された熱い熱いメッセージなのである。敵の首領がマッシュルーム・カットで、とっくりのセーターを着て、トヨタ2000GTに乗り、アンニュイなカノジョと夕暮れの四畳半のアパートに同棲しているとか、そういうマニアックな部分にばかり目を奪われていちゃいけません。20世紀博が発する「懐かしいにおい」から、自分の臭い足のにおいで我に返るという、子供にとってはお約束のギャグシーンが、涙でまともに見られなくなったのは私だけではないはずだ。確かに「輝かしい未来は過去の中にしかない」のかも知れない。郷愁というものには抗えない魅力がある。しかし、ささやかな希望を信じて未来を生きることを選び取る苦しい苦しい決断。そしてラストにケンちゃんは言った。「お前の未来、返すぞ」と。果たして過去の中に存在していた未来より素晴らしい未来を作れるのか、すべては我々観客に託されたのだ。今を、未来を生きることの大切さを見事に描き出した日本アニメ史上に燦然と輝く大傑作。子供映画、それも下品な作品(「しんちゃん」は見せない!っていう親御さんは多いらしいですな)と侮るなかれ、こういう映画を見ずして明日の日本はないぞ!仕事に追われ、日々の暮らしに疲れた大人達よ、この映画を見て今日を、明日を生き抜こうではないか!これを見て泣かない奴は人間として間違っている!とにかく見ろ!そして泣け!