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ダイキチデラックス

刑事物語2 りんごの詩

[監督]杉村六郎 [出演]武田鉄矢、酒井和歌子、園みどり  1983年


男は強くなければ、大好きな人はみんな遠くへ行ってしまうんだぞ!

 武田鉄矢ってのは説教臭くてイヤですね。もう説教したくて説教したくてたまらない、いわゆる「いい話」したくてたまらないって感じのオーラが出まくっていて鬱陶しいですよね。金八先生の第1シリーズの頃は、若くて汚い奴だったから少々の説教をかましていても聞けたし、逆説的に説得力もあったんですけれど、今となっては、歳も重ねて実力も持っている古株教師が、生徒どころか他の教師にまで説教かますイヤな番組になっていますからね。今後の展開としては、実績はあるか知らんが、固定概念に囚われちゃって生徒の心は掴めず、他の教師からも馬鹿にされ、失意のうちに教職を去る、っていうのが一番良いんじゃないですかね。でなきゃ、加藤君との触れ合いの実績に酔い痴れていたせいで、時代の移り変わりについていけず、ごく普通の生徒に遊び半分で軽~くナイフで刺されて死亡、とか。あれは、そもそも、昔ながらの熱血新人教師のドラマを今風にアレンジして演出してみましたってことで、「新しい革袋に古い酒」だったわけですよ。そういう意味では、『機動戦士ガンダム』と一緒です。それを「新しい酒」だと勘違いした人たちが騒ぎ立ててシリーズ化しちゃって、ドラマそのものの価値を下げてしまったという不幸な作品であるわけです。そろそろ引き際を考えておかないとね。星野真里は可愛いけどね。

 さて、この映画もシリーズ第5弾くらいまで作られていたはずですが(ちなみに『刑事物語3 潮騒の詩』は沢口靖子のデビュー作)、後に行けば行くほど武田鉄矢がはしゃいでいるだけのクソ映画になっていきました。見るのなら、やっぱり、この「りんごの詩」を見なくちゃ。これはシリーズ最高傑作であるだけでなく、日本のハードボイルド映画としても屈指の完成度を誇る作品なのです。弘前中央署に、札幌署から刑事が訪ねて来た。彼らは、2年前札幌で発生した現金輸送車襲撃事件の証拠品である、りんごの種の品種分析を依頼に来たのだ。早速、りんご試験場を訪ねた武田鉄矢は、所員の園みどり(後の未来貴子)にりんごの種の栽培を頼む。毎日通ううち、鉄矢は彼女に好意を抱くようになる。ある日、みどりから双葉が開いたという電話があり、彼女はこの双葉が紫色の花だったら素晴らしいと告げる。その夜、りんご試験場の研究室が荒され、現場に駈けつけた鉄矢はみどりの死を知らされる……。

 これまた相当男泣きの映画。愛する人を殺され、怒りのワンマン・アーミーとなって真相究明に走る武田鉄矢が恐ろしく強くてカッコいいです。必殺のハンガーヌンチャクもバッチリ炸裂します。そして、悲しい真実が明らかになったとき、それをどう受け入れて生きていくのかまで考えさせる見事なラスト。歴史の奥底に埋もれていますが(鈴木保奈美は『刑事物語5 やまびこの詩』に出ていたことを隠している)、この「りんごの詩」だけは再評価してもらいたい。ラストの吉田拓郎の歌「唇をかみしめて」が沁みるねぇ。


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