ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

発狂する唇

[監督]佐々木浩久 [出演]三輪ひとみ、阿部寛、大杉漣  1999年


B級カルトの名にふさわしい発狂ホラーエンターテインメント

 阿部寛というのは味のあるいい俳優になりましたねぇ。やっぱり『TRICK』でブレイクってことなんでしょうけれど、このR15指定のバカ映画でも魅力全開です。バカ映画に対する深い愛が感じられますね。もっともっと活躍してほしいものです。しかし、こんな作品でまで名演技を見せなくてもいいのではないかと少々心配になります。

 女子中学生の首を切り落とすという猟奇殺人事件が発生。容疑者の鈴木一真は行方をくらましており、残された彼の母とふたりの妹はマスコミや近隣の住民達から執拗な嫌がらせを受けていた。そんな中、兄の無実を信じる末妹の三輪ひとみは、心霊研究所の霊能者、由良宜子に救いを求める。真犯人は鈴木ではないと断言する由良は、降霊の儀式として、女二人をズコバコ犯したうえに、たまたまやって来た警官をぶち殺して、その死体を使ってひとみちゃんまで後ろから前から好き放題。興奮しているのは犯され役のピンク女優吉行由実だけで、見ている方は、あんまり気持ち良くない。それはともかく、儀式のおかげで、被害者の首なし少女たちが使い魔として復活、自分たちの首を探し始めたまでは良かった(?)が、ひとみちゃんには強く念じただけで人を殺す不思議な力が備わってしまった。そこへ、FBI捜査官の阿部寛とパツキン栗林知美が現れた。事件の真犯人が由良たちだと睨んだ彼らは、ひとみちゃんに捜査協力を求める。少女たちの霊によって鈴木の潜伏場所が判明、ひとみちゃんは森の中の古びた家へ赴くのだが……。

 ホラーなのかコメディなのかSFなのかミステリーなのかミュージカルなのか、そのどれでもあるし、どれでもない。阿部寛の怪演以外は、栗林知美の外人演技(金髪のヅラをかぶって片言で話すだけ)も大杉漣のもっこり踊りもスベりまくりで、正直言って作り手の狙いは半分以上外れている気がするんですけれど、いいのでしょうか。脚本を書いたのは『女優霊』『リング』で、Jホラーの旗手といわれる高橋洋なのに、高校生の自主制作と大して変わらん完成度って気もしますが、まぁ、話のタネに一度見ておくのも良いでしょう。

 それにしても主演の三輪ひとみというお姉ちゃん、凄く可愛いのに、こんな役をやっていいのでしょうか。後ろから前から延々犯され、下手くそな歌をソフトフォーカス画面で歌わされ、妙に気合の入ったカンフーアクションで戦わされ、挙句の果てには、あのラストシーン……事務所は何を考えているのだろうか。もっとも「平成のホラークイーン」なんて言われて、この手の映画にばっかり出ているので、本人としては狙いどおりの路線なのかも知れませんが、芸能界で生き残っていけるのか、かなり不安です。続編(?)『血を吸う宇宙』(2001年作品)では、ブルセラ女優の中村愛美が主演ですが、本作以上のインパクトは感じられません。まぁ、似たようなものをいくつも見せられても、ってことなんですけど、主演女優の弾け具合というか覚悟というか「やる気」というか、そういったものが足りないんでしょうな。


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