ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

黒蜥蜴

[監督]深作欣二 [出演]美輪明宏、木村功  1971年


また明日、別の鏡に映る別の私に聞くとしましょう

 帝都東京の暗黒街の一角で、一座から崇められる黒衣の夫人がいた。求めに応じて「宝石踊り」を舞う彼女の左腕には、黒いトカゲの刺青があった。彼女こそ、美貌の女族、黒蜥蜴である。黒蜥蜴こと美輪明宏は、東京に滞在中の大富豪、宇佐美淳也の令嬢である松岡きっこ誘拐を画策していたが、宇佐美は相次ぐ警告文をもとに、素人探偵木村功に依頼して、その身辺警護に当たらせていた。木村の妨害できっこ誘拐に失敗した美輪は逃亡するが、後日、宇佐美の大阪の自宅から、まんまときっこを誘拐する。美輪は、きっことダイヤモンド「エジプトの星」の交換を要求するが、受け渡し場所に現れた木村に妨害され、自家用の船で逃亡を図る。船に乗り込んだ木村は美輪との虚々実々の駆け引きの末、隠れていた長椅子もろとも海に投げ込まれてしまう。好敵手木村を失い、激情にまかせ号泣する美輪だが、気を取り直してアジトに戻り、きっこに誇らしげにコレクションを披露する。それは美しい人間、つまり剥製化された人間の陳列だった。美輪は、きっこをその陳列に加えるつもりであると残忍に言い放つ。果たしてきっこの運命は?そして、名探偵木村は本当に死んでしまったのか?

 美輪明宏と言っても、黄色い髪の毛で、いろいろとありがたいような説教くさいようなことを言っている人というイメージしか持っていないヤングも多いかも知れません。もともとは、銀巴里というシャンソン喫茶で歌っていた歌手で、「メケメケ」(メイキュメイキュラブミ~♪←それは「恋はメキメキ」by トム・ジョーンズ)や「ヨイトマケの唄」といったヒット曲を持っています。銀巴里は、文壇の社交場だったらしく、吉行淳之介、野坂昭如、大江健三郎、遠藤周作、寺山修司といった人たちの支持を得ます。そんな取り巻きの中に乱歩や三島由紀夫がいたわけです。まぁ乱歩も三島もホモですから、同好の士で美少年だった美輪(特に三島は「天上界の美」と絶賛した)にはイチコロだったんでしょうね。

 本作は、原作のファンだった三島が戯曲化したものの映画化です。戯曲でも美輪の代表作である黒蜥蜴(ちなみに1968年の公演では、三島が明智役に天知茂をオファーした)の満を持した映画化で、どこから切っても美輪明宏の映画です。原作が乱歩だろうが、監督が深作欣二だろうが、三島がちょろっと出て肉体美を披露していようが、まったく関係なく美輪明宏の映画。美輪明宏・オン・ステージ!音楽は冨田勲ですが、いきなり歌いだす主題歌「黒蜥蜴の歌」は自ら作詞作曲を手掛けています。♪ 誰も入れぬ ダイヤの心 冷たい私の心の中には どんな天使も 悪魔の囁きも 男の愛など届きはしない 届きはしない~♪……勝手にしろ。そこから目くるめく美輪ワールドが展開します。せっかく性別不詳、年齢不詳の美輪が主演しているのだから、もっと耽美な感じを前面に出しても良かったように思うけれど、深作監督には無理な相談だったのかもしれない。というわけで、映画としてどうこうではなくて、ひたすら美輪を追いかけて見るのが正解です。


copyright©Daikichi_guy 1999-2020  all rights reserved.