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ダイキチデラックス

ポルノ時代劇 忘八武士道

[監督]石井輝男 [出演]丹波哲郎、ひし美ゆり子、伊吹吾郎  1973年


死んでいくのも地獄なら、生きていたとてまた地獄か

 まずタイトルでひと笑い。「ポルノ時代劇」よ、何それ?「ポルノ」って言葉もほとんど死語ですな。「ト●コ風呂」くらい死語ですな。ファッションヘルスでメンタルヘルス。さて、小池一雄原作の劇画を映画化。小池一雄です。『マジンガーZ』の主題歌をはじめ、数々のアニメ、特撮作品の作詞を手掛けたことでも有名な小池一雄です。「ん」を「ン」と書く小池一雄です。『子連れ狼』じゃ乳母車にガトリング砲やバズーカを仕掛け、『御用牙』じゃ同心の拷問道具をチ●ポに設定し、あまつさえ鍛えるためと称してチ●ポをすりこぎで叩かせた小池一雄です。そんな気の狂った人の原作を、これまた気の狂った石井輝男が映画にしています。

 「人斬り死能」と恐れられている非情の男、明日死能(あした しのう。なんちゅう名前じゃ。さすが小池一雄原作)こと丹波哲郎は、役人に追われていたが、吉原遊廓の忘八者、伊吹吾郎とその一党に助けられた。忘八者とは、八つの徳、「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を全て忘れた無法者、人にして人に非ず、人たる姿を忘れた鬼畜外道の集団で、江戸吉原一帯をとりしきる無頼の徒のことである。吉原総名主、遠藤辰雄に気に入れられ、客分にとり立てられた丹波は、遠藤の意を受け、初代首斬り浅右衛門が使ったという大刀「鬼包丁」で、湯女、茶屋女など流行する私娼窟を次々に潰していく。遠藤は老中の評定所が動くことを期待して、事を荒だてたが、期待に反して老中は、遠藤との正面衝突を避けるため、秘かに黒鍬者と呼ばれる川谷拓ボンを放って丹波の命を狙った。このため伊吹の命令でひし美ゆり子、相川圭子、池島ルリ子ら女忘八者が丹波を護衝する。やがて、黒鍬者の襲撃が始った。凄絶な斬り合いが展開される……。

 ヤクザだろうが役人だろうが、立ちはだかる奴らを斬って斬って斬りまくる。なにしろ監督は石井輝男なので、例によって腕がピュ~、生首ド~ン、血しぶきドバ~ッです。それはもぉ気前良く映像化しちゃってくれちゃっています。主演は、これまた気の狂った丹波哲郎。なんとロン毛で登場、あの顔にロン毛ですよ!その顔でジロリと睨みを利かされた日にゃ、恐ろしいを通り越して笑ってしまいます。しかも、睨むだけでほとんど喋らず、楽して稼いでいます。死にたいんだか死にたくないんだか、よく分からないキャラクターですが、少なくとも丹波のバイタリティは、絶対に「死」の方向には向かっていませんから、いくら青白くやつれた顔で現れても、まったくリアリティはありません。武家の娘を犯して遊女に仕込む「忘八試し」に失格してしまうというアマちゃんなキャラクターも、丹波だということでリアリティを失っていますが、もともとが無茶苦茶なので、丹波と相殺してちょうどよかったのかも知れません。そんな姿を見るだけでトリップしちゃいますが、この上、アンヌ隊員ことひし美ゆり子を筆頭に裸女軍団が画面狭しと大活躍。アヘン漬けにされるシーンでは、わけの分からないサイケなライティングも出てきたりして、もぉほとんどSFの世界です。あっちへ行っちゃっています。それにしても、石井監督は、こんな映画を山ほど撮っているのに、本作に限ってわざわざ「ポルノ時代劇」と銘打った理由が分からない。なんなんだろう、「ポルノ時代劇」。


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