ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

怪獣総進撃

[監督]本多猪四郎 [出演]久保明、小林夕岐子、愛京子  1968年


DESTROY ALL MONSTERS!ゴジラ電撃大作戦

 近未来である20世紀末、国連科学委員会は硫黄島に宇宙港を建設する一方で、世界の脅威だったゴジラ、ミニラ、ラドン、モスラ(幼虫)といった人気怪獣のほか、アンギラス、バラン、バラゴン、ゴロザウルス、マンダ、クモンガなど微妙な顔ぶれを小笠原諸島の島(通称「怪獣ランド」)に集め、平和裏に管理・研究していた。しかし怪獣ランドに突然黄色い毒ガスが充満した直後、怪獣たちが世界各国に出現して暴れ始めた。各国の軍隊が揃いも揃って役立たずなので、国連科学委員会は、月ロケットムーンライトSY-3艇長の久保明に怪獣ランドの調査を依頼。早速調査に向かった彼らは、怪獣ランドの土屋嘉男博士や小林夕岐子技師によって怪獣達がリモコン操作されていることを知る。更に、土屋博士達を操るラメ入りの尼さんキラアク星人が姿を現し、地球侵略を宣言する。

 ゴジラシリーズ第9作。怪獣ブームも終わりを迎えていたため、これで打ち止めのつもりで派手に作ったら皮肉にもヒットしてしまい、シリーズ続行が決まったといういわくつきの作品。本作がなければヘドラもガイガンもメカゴジラもジェットジャガーも出現しなかったわけだけれど、ガバラもメガロも見なくて済んだのにと思うと、複雑な気持ちになる罪深い作品でもある。人気怪獣を総動員したというのが売りなのに、バラゴンとバランはちらっと映るだけでまったく活躍せず、映っている奴らにしたところでウルトラ怪獣とは違ってデザインも能力も地味な連中ばかりで(もっとも登場していない怪獣もエビラ、カマキラス、大ダコといった面々なので五十歩百歩もいいところなのだが)、画面映えしないこと甚だしい。その分、ムーンライトSY-3の未来で宇宙なテイストにおんぶに抱っこの絵作りとなっている。このムーンライトSY-3は単なる月ロケットのくせに軽自動車並みに小回りが利き、燃料タンクが爆発するほどの高熱どころか、ゴジラの放射能火炎を浴びてもびくともしない無敵の機体。おまけに乗っているのが科学者とは思えない特攻精神あふれる久保明で、操られた怪獣ランドの職員の脳天やどてっ腹に容赦なく鉛玉をぶち込むハードボイルドっぷりで、軍の田島義文司令官や田崎潤博士から頼りにされまくる(月基地の佐原健二司令はヤケクソになってコーヒーを飲んでいるだけ)ので、正に鬼に金棒、キチガイに刃物状態。

 こんな奴の相手をする羽目になったのが憐れなキラアク星人で、企画段階のタイトルが『怪獣忠臣蔵』だったことから「吉良悪」と名付けられたものの、姿かたちでは『怪獣大戦争』のX星人に、意外な正体という点では『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』のハンター星雲M星人に一歩譲り、見た目でも、操られて眉のラインが吊り上った小林夕岐子の、さすが血を吸う人形の面目躍如な怖さに劣るという押し出しの弱さ。穏やかかつ紳士的に話す割には世界の主要都市を焼け野原に変えたり、後先考えずにファイヤードラゴン特攻作戦を敢行するなど、にこやかな尼さん姿からは想像もできないヤケクソな攻撃をしたものの、久保明の無茶な活躍の前には歯が立たず、意外にあっさりと最期を迎える。世界中に怪獣コントロール装置をばらまいたり、人類に全く気付かれずに富士山麓の地下や月に基地を作っていた手際の良さは一体どこへ忘れてきたのかと小一時間ほど説教したくなる体たらくで、連れてきたキングギドラも、地球怪獣軍団の血も涙もない集団リンチで寄ってたかってぼこぼこにされ、金星の文明を三日で滅ぼしたという宇宙超怪獣の面影は微塵もないのだが、お祭り映画でそんなことを言うのは野暮ってものなので、怪獣いっぱい嬉しいなぁと童心に帰って楽しみましょう。


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