ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

ごろつき犬

[監督]村野鐵太郎 [出演]田宮二郎、天知茂、水谷良重、江波杏子  1965年


安心せぇ、みね撃ちや!

 スケとハジキに明け暮れる田宮二郎は、珍しくもキャデラックを乗り回す水谷良重に誘われて、白浜温泉で正月を迎えた。宿屋の女中、坂本スミ子を相手に、時間をもてあます田宮に、良重はボディガードを頼んだ。ハジキに関係のある仕事ということで喜々として大阪のドヤ街に戻った田宮は、顔見知りのショボクレ刑事天知茂から、同僚を殺した一六組のボス根上淳を捜して欲しいと懇願された。この根上こそ、良重が「殺されそうだ」と訴えた男であった。どうやら根上は乾分と共謀して大会社の金をゆすっているらしい。数日後、田宮がドヤ街で見かけたのは、白浜で出会ったハジキを持った男だった。この男が根上ではないのか?疑惑を覚えた田宮は、根上を白浜に追ったのだが……。

 田宮二郎と言えば『白い巨塔』の財前五郎役が生涯の当たり役。特にテレビ版後半の鬼気迫る演技には釘付けになったものですよ。その他『黒の試走車(テストカー)』、『黒の切り札』、『黒の超特急』等の「黒」シリーズでクールな二枚目というイメージが固まっていますが、『クイズ・タイムショック』の司会でも分かるように、爽やかイメージを前面に出した役もあります。有名なところでは『悪名』シリーズの勝新太郎の相棒、モートルの貞(第2作で死んじゃったので、第3作からは貞の弟、清次)役でしょうか。しかし、ここに陽性の魅力をレッドゾーンまで振り切った主演作があります。これぞ「犬」シリーズ、全9作!これを見ずして田宮二郎は語れない!これこそ田宮の最高傑作シリーズだ!とにかくカッコイイ!イカス!住所不定、無職、拳銃の腕前は超一流(曲芸みたいな撃ち方を披露)、女にゃモテモテ(自称)、おしゃれな衣装に身を包み、そして義理人情に厚いトッポイ野郎、鴨井大介。この名前を覚えておきなさいね。日本映画史上に残るヒーローの名前なんですから。その鴨井が、毎回、なんやかんやで事件に巻き込まれて、なんやかんやで暴力団を壊滅させちゃう痛快・爽快アクション!こんなに陽気な田宮二郎、他ではお目にかかれないぜ!

 そして共演の天知茂が、これまたイイ!クールな二枚目、ニヒルでハードボイルドが代名詞の天知が、うどんが好物で、コロンボみたいなよれよれのコートを着たしょぼくれ刑事を好演しています。こんなトボケた役もハマりにハマっており、残念ながらシリーズ全作には登場していない(出ているのは、第1作『宿無し犬』、第3作『ごろつき犬』、第5作『鉄砲犬』、第6作『続鉄砲犬』、第8作『早射ち犬』、第9作『勝負犬』)けれど、田宮との関西弁での掛け合いは爆笑必至です(ちなみに天知の関西弁は上手くはない)。田宮は京都出身なので、関西弁のワイズ・クラックが実に素晴らしくかっこいい。いつも出てくる坂本スミ子(どれだったか忘れたけれど、「♪ そりゃそうだわねぇ~」と歌い踊っていたのが忘れられない)といい、関西お笑いテイストも満載で、さすが原作・脚本は藤本義一。とにかく損はさせないから絶対見なさい!


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