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ダイキチデラックス

直撃地獄拳 大逆転

[監督]石井輝男 [出演]千葉真一、佐藤充、郷鍈治  1974年


知能指数ゼロのお下劣空手アクション!

 国際慈善会議名誉会長のザビーネ・カウフマン夫人が日本の身障者のために開催する宝石展示会のために来日したが、6億円の保険がかけられている「ファラオの星」が盗まれ、愛娘も誘拐される。娘と宝石奪回を依頼された保険会社会長の丹波哲郎は、元警視総監の池部良に助けを求めた。そこで池部は、中島ゆたかに命じ、前作『直撃!地獄拳』のラストで200億円の麻薬をフイにしたバカトリオ、甲賀忍法の使い手の千葉ちゃん、自称世界一の金庫破りの郷鍈治、元警視庁刑事の佐藤允を招集した。数日後、ギャングから6億円用意しろとの連絡が入り、指定の場所に向かった千葉ちゃん達だが、娘は返されたものの、6億円はまんまと奪われてしまう。娘が戻った夫人は、今度は「ファラオの星」の保険料として丹波に6億円を支払わせ、直接ギャングと取引をして、宝石を取り返した。結局12億円を損した丹波は、調査員の志穂美悦子から、夫人のバックにはマフィアが絡んでおり、一連の事件が丹波から金を取るための芝居だったと報告を受ける。すべてを知った千葉ちゃん達は、「ファラオの星」を盗もうと、世界一厳重な金庫破りに挑むのだが……。

 前作『直撃!地獄拳』が、はっきり言ってあまり面白くなかったので、正直期待していなかったのです。これなら続編も、そんなに面白いものではないのだろうと高をくくっていたら、こちらは異様にエネルギッシュでパワーあふれるバカっぷりにビックリ!なんでも、空手映画があまり好きではなかった石井輝男監督が、続編のオファーにうんざりして、思い切りバカ映画に仕立て上げたとのこと。おかげで弾けまくって脳みそがバーストしております。劇場の大画面で展開されるフケだの鼻くそだのおならぷぅだの品性下劣なギャグのオンパレード。ラストシーンのオチに至っては、石井監督の『網走番外地』シリーズを見ている人でないと絶対に分からないのですが、逆に言えば、自作のパロディがオチとして成立する(見た人みんなに分かってもらえる)という自信があったということですから大したものです(極めて限られた人間にだけ向けて作られたのかも知れませんが)。とにかく、そんなゴーマンな作風にすっかりノックアウト。ここまでバカバカしい映画というのは、そうありませんよ。ただでさえ胡散臭さ満点なのに、ゲストに丹波哲郎と志穂美悦子を出してきたら、もう地獄の底まで一直線です。で、この二人、皆様の御期待に沿いまくってくれます。観客の期待にばっちり応え、なおかつ予想を上回る作品を作るというのは、やっぱりスゴイことです。偉い。

 しかし郷鍈治は、顔はヒドイけど良い声をしていますねぇ。宍戸錠の弟で、ちあきなおみの旦那だからといって、この人を主役トリオの一人に使うというのは、どういうセンスなんでしょうか。少なくとも主役級の俳優じゃないと思うのですが、それはともかく、この作品での存在感は抜群で、『0課の女 赤い手錠』でも聞かせていたドスのききまくった声&狂ったような笑い声は実に素晴らしい。こういう無茶な雰囲気の俳優って、最近あんまり見ませんねぇ。


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