ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

SFソードキル GHOST WARRIOR

[監督]J・ラリー・キャロル [出演]藤岡弘、ジャネット・ジュリアン、ジョン・カルヴィン  1984年


武士道とは死ぬことと見つけたり

 1552年(室町時代後期)、日本のマカベ一族の武将ヒロシ・フジオカは、敵に捕われた妻を救出しようとするが、返り討ちにあい、湖に転落し、消息を絶った。そして400年後の現代、バカップルのスキーヤーが、極寒セックスを楽しもうと覗いた洞窟で、氷漬けのデーモン族状態で冷凍保存されているヒロシを発見。彼は、カリフォルニア低温外科医療法研究所で蘇生手術を施され、現代のロサンゼルスによみがえった。時代も国も違う生活に戸惑い、格好も毛の色も妙な連中を警戒するものの、白人の下半身に不満たらたら(推測)の女性ジャーナリストだけには心を開き始めるヒロシ。しかし、ある夜、サムライの魂である刀(この時代では骨董として超高値)を盗もうとした所員をあっさりと斬り捨てたヒロシは街中へ逃亡、チンピラに襲われていた黒ん坊を助け、更にお札参りにきたファッキンなチンピラ・アメ公を斬殺したことで、警察に追われる羽目になってしまう……。

 設定だけ聞くとB級、いやC級の腐臭すら漂うバカ映画。しかし、この映画はバカにも出来なきゃ笑えもしない。意外なことに感動しちゃうのである。それは監督が偉大だからでもなんでもなく、ひとえに藤岡弘のおかげ。なんでも、武道を通してかねてから関心のあった侍を演じられると大喜びの藤岡だったのだが、最初の脚本を読んだ途端、アメ公の書いたあまりにも陳腐でくだらないサムライ像に滂沱の涙を流し、本場のサムライ・スピリットを発揮して通訳を通じて誤りを指摘、その上、日本の伝統文化における侍の地位、役割を粘り強く説明し、脚本の書き直しを実現させたらしい。ジャパニーズ・役者バカの熱意に深く感銘した現地のスタッフは、藤岡のことを「ヒロシさん」と呼び、敬意をもって接するようになったという。また、苦労の甲斐あって藤岡の演じる「侍」は各国で高い評価を得て、パリ国際ファンタスティック&SF映画祭では批評家賞を受賞、日本人として初めて米国俳優協会の会員となったのだ。熱い……熱いぜ、藤岡弘!

 また、これがきっかけで、「昔の武将は一度「、」を打って決意した。周囲に流されることなく立ち止まり自分を見つめる」という覚悟と「『我未だ完成せず』との意味を込めて」、「藤岡弘、」と改名したそうな。なにしろ外国で作られる日本ネタの映画なんてものは、古くは魔法使い扱いの忍者、今ならカンフー使いのエコノミックアニマルと勘違いも甚だしい作品ばかり。まぁ、それはそれで味わい深いものがあるのですが、敗戦国民としては心の奥底に怒りと悲しみを溜め込んでしまうわけですね。そんなとき現れたこの映画!素晴らしい!日本人の、サムライの心ってもんが分かる。『ラストサムライ』なんて見ている場合じゃないよ。藤岡弘は名誉国民にしなくちゃいかんな。いやぁ、役者の気迫というものは、作品のレベルを数段上げるものなのだなぁと実感。みんなで見よう!


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