ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

アーリャマーン EPISODE 1帝国の勇者 AARYAMAAN

[監督]ディンカー・ヤニ [出演]ムケーシュ・カンナ、キラン・クマール  2001年


インド版「スター・ウォーズ」登場!

 インドとSF……この組合せを想像するだけでも破壊力抜群だが、ここに我々の想像を絶する映像が現れた!なんとインド史上最高の巨費を投じたテレビ番組で視聴率は80%以上!(もちろんインド初)インドで80%以上ということは、全世界でも30%くらいのシェアになるんじゃないか。でも、インドには何台テレビがあるんだろう?そんな、それこそインド人もビックリのスペース・マサラ・ムービー!

 地球が生まれる遙か10万年前、アリヤナ銀河で、預言者であり銀河一の武芸者ホーシンが、一人の若者を鍛えていた。シルベスタ・スタローンとコント赤信号の渡辺を足して3で割ったような中年太りの青年……彼こそはタール王国の真の後継者にして伝説の戦士、アーリャマーンなのだ。25歳になって精通もバッチリのアーリャマーンは、宇宙支配を企むオセック宇宙団体労働組合(!)の長ナーラックの野望を阻止するとともに、王権を狙う極悪継母とキチガイの化け物異母兄(トゲや尻尾が生えてる)に幽閉された両親を救い、アリヤナ銀河解放と自由のために戦うのだ!

 のっけから宇宙空間でのドッグファイトが、まるで往年の名ゲーム、ゼビウスを髣髴とさせる動きで我々を圧倒する。ものすごく狭いスタジオでビデオ合成したと思しき窮屈でギクシャクした動きが宇宙を感じさせ、炸裂するCG画像が、インドといえばカレーと牛糞とバクシーシという我々世界に冠たる先進国民の驕り高ぶりを根底から覆してくれるのだ。デザインワークはスターウォーズのまんまパクリ……いや、オマージュに満ち満ちており、特にアーリャマーンをアシストするアンドロイド・トボは本家C-3POよりもロボットらしく、スーツ製作の下手さ加減と中に入った役者の制限された動きが感涙を誘う。おまけにセットやコスチュームは紙でできているとしか思えず(影もあらかじめ塗ってある)、旧東ドイツにおけるダンボール自動車(トラバント)技術の伝統を正しく受け継いでいるのだ。その他、慣れないワイヤーアクションまで披露し、後進……いや発展途上……もとい第三世界……とにかくインド映画界の熱意が伝わりまくるのだ!

 まぁ、スターウォーズをパクるにしたって、あれはもともと日本の時代劇を宇宙でやっただけなんだから、同じ東洋のインドなら、もうちょっとなんとかなったんじゃないかと思わないでもないし、インド映画ということで、やれ因果応報だの輪廻転生だの歌って踊るだのという要素を期待しがち。実際、下手なビームサーベル使うより念力だ何だとインドらしい要素を取り込んだ方が面白く出来上がるように思うのだけれど、西欧化という観点から見れば、これはこれで正解なのかも知れない。自国独自の文化とは何か、先進国に追いつけ追い越せという技術優先の考え方は正しいのか、真の発展とはどういう形をとるべきなのかなど、色々深いことまで考えさせられます。

 で、この作品は100話以上放送されたというTVシリーズのダイジェスト版第1弾。主演のムケーシュ・カンナがテレビから選りすぐりの場面を選んだとか(ちなみに企画、製作、脚本もこのオヤジ)。ラストは、アーリャマーンが宿敵ナーラックに捕らえられ、生きたまま彫像に固められた上に、目前で数千万人の住む惑星(考えてみれば人口少ないな)を爆破されるという絶望的な場面で幕を閉じる。さぁ、この後どうなる!?って、EPISODE 2がリリースされなかったらどうするんだ?


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