ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

DIGITAL TRIP 未来警察ウラシマン SYNTHESIZER FANTASY

[音楽]風戸慎介、鈴木キサブロー、芹澤廣明 [編曲、演奏]越部信義、小久保隆  1983年


過去から未来へ転移したウラシマ・エフェクト・ミュージック!

 その昔、シンセサイザーというものが未来の楽器だった頃(どんな昔やねん)、アニメのBGMをシンセで演奏する「デジタル・トリップ・シリーズ」という、考えてみりゃお手軽な企画がありました(そう言えば、ジャズ・アレンジしちゃう「ジャム・トリップ・シリーズ」なんてのもありましたな……)。そういう企画が成立すること自体、時代ってものを感じさせますなぁ。これがまた、物珍しさと、YMOチルドレンであるがゆえの興味と、「アニメのBGMなんてなぁ……」とかいう背伸びしたいお年頃の思春期特有の照れくささとにアピールしちゃったわけで、それなりの人気を博し、たくさん発売されました。

 このシリーズの企画は、『さよなら銀河鉄道999』の音楽を担当した東海林修が自らシンセ・アレンジしたのが発端らしいです。シンセ奏者としても名を馳せる東海林ですからねぇ。よっぽどシンセ好きなんですねぇ。でも、このアルバムで、アレンジと演奏に起用されたのは、「サザエさん」や「マッハGoGoGo」で有名な……なんてアニメの世界だけに矮小化してはいけませんね。誰あろう、畏れ多くも、数々の童謡を作り出した名作曲家、越部信義が担当しております。偉い人ではあるわけですが、どうして、デジタル・トリップの生みの親である東海林修を差し置いて、この仕事をしているのかは謎です。

 さて、中身はと言うと、なかなかイカシたアレンジで、後にテレビのBGMに逆輸入されたほどです。もともとBGM自体の出来がかなり良かったというのもありますが、シンセの音色のキラキラしたイメージが未来警察ってコンセプトにマッチしたんですね。しかしまぁ、当時はシンセと言えば、無機的、硬質、そんな感じが売り(て言うか、そんな音しか出せなかった?)だったので、最近のゲーム・ミュージックみたいに、やたら豪華なオーケストレーションみたいなもん期待しちゃダメですよ。今の耳で聞けば、そりゃ古臭く思えるのは仕方ありません。何て言うか、あの時代ってものを偲んで聞くもんですね。もちろん、充分、聞くに値する作品であることは言うまでもありませんよ。時代の最先端のシンセが古き良き時代を偲ばせる音になるなんて、これを皮肉と言わずしてなんと言うのでありましょうか。て言うか、新しいものは必ず古ぼけてしまうと言う歴史の必然なのでありましょうか。なんてことを書いてますが、そんな難しいこと考えながら聞いたことは一回もありません。聞いて美しい、それだけで良いのです。

 しかし、こういう音盤こそ、CDで再発すべき、CD化がふさわしい作品ではありませんか。どうして、放ったらかしのままなんでしょうね。カセットテープなんて、今どうやって聞けというんでしょう。なんとかしてくれ。というわけで、日本コロムビアは一考されたい。


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