ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

ルパン三世クロニクル ルパン三世 THE 1st SERIES ANTHOLOGY

[音楽]山下毅雄  2003年


よしなよ冗談は。ブローニングは背中に感じやすいんだ。

 「早すぎた天才」「7000曲を作った男」山下毅雄=ヤマタケが担当した『ルパン三世』TV第1シリーズの音楽集です。ベースになっているのは、いろんな意味で有名な「テレビ・オリジナルBGMコレクション ルパン三世~山下毅雄 オリジナルスコアによる『ルパン三世』の世界~」というアルバムです。

 この「オリジナルスコア」というのが曲者で、実は新録音で「テレビ・オリジナル」じゃないのです。BGM集の企画を立てたはいいものの、マスターテープが行方不明という非情な事実が判明したため、仕方なく新規録音したのですね。普通、確認してから企画を立てるもんじゃないんだろうかという素朴な疑問も湧いたりするわけですが、それならそれで「テレビ・オリジナル」なんて書かなきゃいいのに、不実ではありませんか。でも、シリーズの一つだから書かないわけにはいかないし、なんていう大人の事情もあったんでしょうね。今なら、そんなふうに思えても、当時そんなことは知る由もない、いたいけな子どもたちは、「騙された!」「オトナは嘘つきだ!」と、めちゃめちゃ傷ついたのであります(私も、その一人です)。LPなんて、おいそれと買える時代じゃなかったですから、尚更ですね。

 それでも、投げ出さずに大事に聞いていたのは高価だったから……だけではなくて、当時、ヤマタケ・ルパンを聞こうと思ったら、このアルバムしかなかったのですよ。大体、山下毅雄なんて名前、誰も知らない時代だったので、当然、子どもたちは「ヤマタケだから聞きたい」のではなくて「ルパンを聞きたい」だったわけですが、あの、他のアニメとはまったく違うオトナな雰囲気の曲を聞けるのなら、テレビで聞いたのと少々違っていても構わない、いや、細切れのBGMと違って、曲として整っているから、ある意味こっちの方が聞きやすいかも、なんて自分に言い聞かせたりしていたものです。後にCD化されたときは、「同じもの2枚も勿体無い」とは思いつつ、やっぱり、ずっと聞いていたいアルバムだったので、ついつい買ってしまいました。CD化の際に主題歌がレコード・ヴァージョン(「ルパン・ザ・サード♪」って、はっきりくっきり発音してる)に差し替えられたのは、返す返すも惜しいことでしたが、尺八吹きまくりの曲が『佐武と市捕物控』のBGMの流用じゃないかとか、こんな曲テレビで流れてたかとか、色々突っ込みながら聞いていました。

 そして、なんと、このアルバムをまるごと収録した上、全OP、ED復刻追加という、嬉しいような、連続で聞かされる方にしてみれば拷問のような(だってSEの入る場所が違うだけで同じ曲が何度も……)素晴らしいアルバムとして蘇ったのであります。いや、ホント、長生きしていても、たまには良いことありますねぇ。ただ、ジャケットは、以前のデザインの方が好きだったりするのですが。これと、大名盤『ルパン三世 '71 ME TRACKS』を持っていれば、1stシリーズの音楽はコンプリート!それにしても、このヤマタケというオッサン、かなり狂っています。ライナーのヤマタケ本人による各曲解説を読めば、よく分かります。正に鬼才の名に恥じない男です。


copyright©Daikichi_guy 1999-2020  all rights reserved.