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ダイキチデラックス

宙 伊福部昭の芸術4 SF交響ファンタジー

[音楽]伊福部昭  1995年発売


コンサートホールで聞いてみたい!

 伊福部昭が、東宝特撮映画のために作った曲を、たった一度きりのコンサート(1983年の「伊福部昭・SF特撮映画音楽の夕べ」)のために管弦楽曲としてアレンジした「SF交響ファンタジー」。

 ご本人は、映画音楽などというものは、映像と一緒でなければ成立しない片肺飛行みたいなものだ、との考えから、こういうコンサートには否定的だったそうですが、あの音楽を思う存分聞きたいと望んでいた人は当然多く、コンサートは大成功、いや、実現してくれて本当に良かったです。このコンサートは、司会に平田昭彦、ゲストに田中友幸(東宝プロデューサー)、本多猪四郎監督を呼ぶというマニア感涙のものでした。行きたかったなぁ……。

 これだけで随分贅沢な感じがするのですが、やはり一度しか聞けないというのは実にもったいない、日本文化の一大損失であるということで、なんと創業昭和31年の老舗、日本フィルハーモニー交響楽団に演奏させるという、これまた贅沢極まりない驚異の企画が立ち上がりました。指揮は広上淳一。いくら「市民とともに歩むオーケストラ」だと言ったって、日フィルも、よく引き受けたものだと思います。時代は確実に変わってますなぁ。怪獣映画の音楽なんぞ「音楽」を名乗る資格はないなんて思われていた一昔前(つい、この間までそうでしたよね……一部のマニアだけのものって感じで)なら絶対成立していない企画だと思います。

 「SF交響ファンタジー」全3番に、「わんぱく王子の大蛇退治」や、特撮映画音楽と似たモチーフが多用されている「倭太鼓とオーケストラのためのロンド・イン・ブーレスク」まで収録されていますので、この時代に生まれた幸せを噛みしめながら、是非、大音量でお聞きいただきたい。野中の一軒家じゃあるまいし、隣が気になって大音量なんかで聞けないよ、とお悩みのあなた。文明の利器ヘッドフォンを使えばいいじゃないですか。耳が少々悪くなるのなんて、大したことじゃありません(←おい)。とにかく、音の厚みとか迫力とかがスゴイんですから。交響楽団ってのは、えらいもんですねぇ。でも、全曲通して聞くと、耳も悪くなる一方だし、なにより特徴ある土俗的なリズムのせいで眠くなっちゃうので、4曲入っているうち、今日は1番、明日は2番、3時のおやつは文明堂という具合に小分けにして聞くのが良いでしょう。しょっぱなのゴジラ出現の音楽から一気に夢幻世界へと引きずり込まれます。幻夢界にひきずりこめぇ!違いますか。不思議時空、発生!(←オカマ声で)ますます離れてしまいましたね。

 それはともかく、やっぱりヘッドフォンじゃ物足りない。生で聞きたい。音響設備の充実した大ホールで聞いてみたい。普段クラシックだの交響楽だのに触れることの少ない(したがってコンサートホールなんぞには行ったことはない)私ですが、まるで客の入っていない京都コンサートホールでやってくれたらチケットを買うぜ。盛装して聞きに行くぜ。京都にゴジラが来たとき(シリーズ第20作『ゴジラvsメカゴジラ』で初めてやって来た)に、ロケとセットで企画する人はいなかったのだろうか。全国からやってくるエキストラや見物人を対象にチケットを売れば、随分儲かったでしょうに。なにしろ1800人くらい入れるんですからね。


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