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ダイキチデラックス

ゴジラ伝説

井上誠  1991年発売


King of the Monsters GODZILLA! It's Alive!

 その昔、まだコンピューター・ミュージックなどというものが、なんとなく未来な感じを醸し出していた頃、『ゴジラ伝説』という3枚のLPが発売されました(1983~84)。東宝特撮映画関係の曲をアレンジしてシンセサイザーで演奏したもので、それをまとめてCD-BOXにしたものが、これです。


 ボックスセットなもので、愛想のない写真ですみません。申し訳ないので、LPジャケットも載せておきます。描くは、日本最高の怪獣絵師、開田裕治画伯です。特に1枚目のジャケット、鏡面ガラスに映るゴジラが、時代を感じさせますね。
当時、割と多かったんですよ、シンセで演奏しているというだけで商品化されるものが。日本コロムビアのデジタル・トリップ・シリーズとかね。シンセってだけで商品価値があったんですね。YMOのブレイクにより、音楽界がテクノポップ一色になった80年代ならではのことです。

 まぁ、それはともかく、プロデュースしている井上誠という人は、ヒカシューのメンバーだった人です。ピカチュウじゃないぜ。ちょっとオヤジギャグっぽかったですか。ヒカシューって、もう知っている人もあんまりいないですかね。1979年にメジャーデビューした、巻上公一率いるテクノでニューウェイヴなバンドで、井上は、そこでシンセを操っておりました。

 さて、このアルバム、1枚目では選曲、アレンジ、演奏ともに真っ当すぎて、薄っぺらいシンセの音が、迫力あるオリジナルに勝てていない状況だったのですが、そのうち、あまり耳にすることのない曲を取り上げ始め、戸川純のユニット「ゲルニカ」にも参加していた変態イラストレーター(劇場版『ドグラマグラ』のポスターも良かった)太田螢一に詞を付けさせたり、これまたテクノポップ・バンド「プラスチックス」の立花ハジメにギターを弾かせたり、巻上公一や戸川純を巻き込むだけでなく、『撃殺!宇宙拳』で有名な(有名か?)漫画家兼スーツアクター破李拳竜だの、双子のリリーズ(もちろん小美人役ですよ)だのに歌わせたりとハチャメチャになって行きました。実は、そうなってからの方が音楽的には面白く、当時のニューウェイヴな雰囲気が充満していて、テクノポップ華やかなりし時代の証人とも言うべき仕上がりを見せています。

 あの頃、ゴジラ周辺はこんなに賑やかだったのです。復活フェスティバルと称して、昔の作品を上映したりしていたのも、この頃でした。レンタルビデオなんてものは無かった時代ですから、皆せっせと映画館に通ったものです。あの熱気が懐かしいです。

 それにしても、このアルバムに参加している人達の名前、どのくらい理解してもらえるだろう?ヒカシュー、ゲルニカ、プラスチックス……物凄く時代を感じさせる人達だ。


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