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ダイキチデラックス

必殺シリーズ・オリジナル・サウンドトラック全集3 助け人走る/必殺剣劇人

[音楽]平尾昌晃/中村啓二郎  1996年発売


田村高廣の軽妙な味を生かす明るい曲が素晴らしい

 さぁ、いよいよ日本人なら持っていて当然の大全集を御紹介するときがやってまいりました。キングレコードによる「必殺シリーズ・オリジナル・サウンドトラック全集」。なんとCD16枚!でも、さすがに全16枚紹介するわけにもいかない……と言うよりは、16枚聞き分けて楽しむなどということが可能な人は、そうそう存在しないと思いますので、個性的というか異色というか、当サイトの趣旨(?)に沿った変り種を御紹介することといたします。

 というわけで、シリーズ第3作『助け人走る』のBGM集です。作曲は、必殺シリーズのBGMの大半を担当した平尾昌晃。前作『必殺仕掛人』『必殺仕置人』で、ほとんどのシーンに通用する基本フォーマットを作り上げたので、これ以降は、流用を前提に曲が作られていきます。本作の特徴は、平和系、軽妙系の音楽が多いこと。特にジャズっぽい曲が多く作られています。個人的には、第2話「仇討大殺陣」における追っかけのシーンでのBGMが忘れられません。

 これは、主演の田村高廣の粋でいなせで軽妙洒脱な味によるところが大きいと思います。オールドファンからは「(父親である)阪東妻三郎そっくり!」との声がよく聞かれますが、とにかく、田村高廣のカッコ良さときたら尋常ではありません。実際、素晴らしい演技力で、弟たちとはレベルが違いすぎますね。『仕掛人・藤枝梅安』の原作者である池波正太郎は、自身の作品を「必殺シリーズ」なんてものに改悪したスタッフ、キャストを忌み嫌っていたらしく、他の作品では絶対起用しないと息巻いていたらしいですが、田村高廣には『剣客商売』の小兵衛役を任せると公言していたほどですから(生きていたら、絶対、藤田まことになんか演じさせなかったでしょう)、その実力のほどが知れます。ATG版『本陣殺人事件』(金田一耕助は中尾彬)での演技も素晴らしく、あの人以外の一柳賢蔵なんか考えられません。

 世間では、裏稼業がばれて奉行所に追い詰められながら仕事する後半の方が評価が高いみたいですが、田村高廣の魅力をとことん引き出した前半の方がずっと面白いと思います。深刻なら、それでいいというわけではないと思うんですがねぇ。表と裏の落差をバッチリ見せる前半こそ『助け人走る』の真骨頂だと断言してしまいましょう。

それに、なんと言っても主題歌「望郷の旅」のイカスこと!これをアレンジした殺しのテーマ「紫煙立ち上る時」も超絶のかっこよさ!しかし、テレビで最も多用されたバージョンは『必殺!ザ・ベスト』でなきゃ聞けないのがタマにキズですね。

 カップリングの『必殺剣劇人』は、シリーズ第29作で、最後に一花、と企画したものの、イマイチで終わりました。新録されたBGMは、中村啓二郎が歌舞伎の音楽をアレンジしたもの一曲だけで、後は全部流用曲でした。


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