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必殺シリーズ・オリジナル・サウンドトラック全集11 翔べ!必殺うらごろし/必殺渡し人

[音楽]比呂公一/中村啓二郎  1996年発売


マニア狂喜乱舞!シリーズ最大の異色作、ついに音盤化!

 キングレコードが出した「必殺シリーズ・オリジナル・サウンドトラック全集」の特大目玉商品です。必殺シリーズを打ち切り寸前にまで追い込み、再放送されることもほとんどなく、なかったことにされているのではないかと思われる超マイナー、カルト、マニアック作品のBGM集が出るなんて、誰が想像しえたでしょうか?

 前々作『必殺商売人』から、平尾昌晃が音楽担当を外れ、代わりを務めた森田公一も忙しかった(なにしろBGMも主題歌も『必殺からくり人 富嶽百景殺し旅』に流用したくらいですから)のか、今回は比呂公一が担当しています。この人、植木等の息子で、『ミラーマン』主題歌を歌った植木浩史と同一人物です。劇伴の仕事をしていたわけでなし、歌謡界で活躍していたわけでなし、どういう経緯で抜擢されたのかは不明です。植木等は、息子の活動に一切バックアップしなかったらしいし、当時は『ザ・ハングマン』もやってませんから、一体なんなんでしょうね。

 それはともかく、本作では、従来の必殺のイメージからかけ離れた音楽設計がなされています。御存知「♪ぱらぱぁ~」のトランペットはありません。フラメンコギターも、哀しみのバイオリンも、『必殺仕置屋稼業』での使用が印象深いサックスも、全部ありません。その代わりに、なんか静かで暗くて不思議な曲が、シンセだのダルシマだのチェンバロだのという豪華なんだか薄っぺらいんだか分からない編成で奏でられていきます。非常に乾いた、透明感のある音楽で、とにかく異質。しかしながら、前衛的などという印象からは遠く、特に被害者側のテーマのメロディラインの美しいこと。さまざまなバージョンで聞けますよ。おまけに、一部地方プリントの第1話にのみ存在する朝日放送アナウンサーの野島一郎バージョンのオープニング(実は、私が見たKBS京都での再放送は、このバージョンでした)まで収録するという徹底ぶりに、制作者の大いなる愛を感じます。オタク魂を揺さぶる名盤、決定盤と言っていいでしょう。

 そして、忘れちゃいけない主題歌は、必殺史上最大の異色作、浜田省吾プロデュース、和田アキ子歌唱の「愛して」。和田アキ子のパンチの効いた声で「愛してぇっ!」とシャウトされた日にゃ、脳髄を直接鈍器で殴打されたような衝撃が走ります。

なお、カップリングの『必殺渡し人』については、シリーズ後期の派手派手しい感じを作り上げた中村啓二郎が作・編曲に初参加(でも、クレジットされないんですよね。こういうのって、どうなんでしょう?)なのですが、新曲は少なく、ほとんどが『必殺仕舞人』シリーズからの流用でした。最大の問題は、後期には珍しく演歌臭のまったくしない傑作主題歌「瞬間の愛」(歌うは中村雅俊)が収められていないことです。日本コロムビアはケツの穴が小さいぞ。


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