ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

BLACK WHIP

BOOGALOO JOE JONES  1973年録音 PRESTIGE原盤


コテコテジャズギター、ここに極まれり!

 ジャズ・ギタリストといえば、オクターブ奏法(1オクターブ離れた同じ音を、一人の演奏家がユニゾンで演奏すること)で有名なウェス・モンゴメリーが押しも押されもしない第一人者です。なにしろガイド本には、この人しか紹介されていないこともあるくらいで(どうしてガイド本はピアノとサックスにだけスペースを割くのだ?)、ピアノトリオをバックに弾きまくって、島田荘司『異邦の騎士』にも出てくる代表作『インクレディブル・ジャズ・ギター』、オルガントリオの『ボス・ギター』、テナー・サックスのジョニー・グリフィンとともに暴れまくるライブの名盤『フルハウス』さえ聞いておけば、他のギタリストなんかドーデモいいという雰囲気が漂っています。

 大体、日本ジャズ界は偏狭なので、他に紹介されるアルバムもジョニー・スミスの『ヴァーモントの月』(1952、53)、バーニー・ケッセルの『イージー・ライク』(1953、56)、タル・ファーロウの『タル』(1956)、(ビル・エヴァンスと)ジム・ホールの『アンダーカレント』(1962)、ケニー・バレルの『ミッドナイト・ブルー』(1963)あたりの60年代前半の作品に集中していて特に代わり映えがしない。まぁアコースティックギターでは『京都殺人案内』のクロード・チアリ『鬼平犯科帳』のジプシーキングスくらいしか思いつかないし、やっぱりテケテケテケテケのエレキ世代になってから、ロックの世界で目立つ楽器なのだなぁと再認識する次第。70年代になるとフュージョン旋風が吹き荒れて『レター・フロム・ホーム』のパット・メセニー、マハヴィシュヌ・オーケストラ『火の鳥』のジョン枕不倫もといマクラフリン、リターン・トゥ・フォーエバー『浪漫の騎士』のアル・ディメオラが三羽烏で活躍したけれど、ここまで来るとギターだけを楽しむといった感じではなくなってくるのだね。しかし、『ジャズ・ラーガ』の変態ギタリスト、ガボール・ザボという例もあるように、ジャズの世界も捨てたもんじゃない。この(アイヴァン・)ブーガルー・ジョー・ジョーンズはソウルジャズ界を代表するジャズ・ファンク・ギタリスト。そして、本作は、ギターのアルバムは地味で退屈で暗いという私の偏見を見事に打ち崩した強烈なアルバムなのです。

 この人は、主にプレスティッジ・レーベルで活躍したのですが、プレスティッジと言えば、ブルーノート、リバーサイドと並ぶジャズ三大レーベルのひとつで、ソニー・ロリンズの『サキソフォン・コロッサス』やマイルス・デイビスのやっつけ仕事4部作なんかを出したところですが、60年代末~70年代初頭には、レコードの商品番号から「10000番台」と呼ばれる好き者垂涎のソウル・ジャズ~ジャズ・ファンク路線のアルバムが10033番レオン・スペンサー(オルガン)の『ルイジアナ・スリム』や10053番ラスティ・ブライアント(サックス)の『フライデイ・ナイト・ファンク・フォー・サタデイ・ナイト・ブラザーズ』など100枚もあるそうです。本作は10072番で、彼のプレスティッジ最終作。最後だけあって集大成の名にふさわしく、とにかくイケイケでノリノリ、コテコテの大傑作なので、是非聞いて驚いてください。プレスティッジを離れて、マイナーレーベルに録音したラストアルバム『スウィートバック』(1975)も素晴らしいですよ。これはジャケットがエロなのも素晴らしいのですよ。


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