ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

NOCTURNE

CHARLIE HADEN  2000年


濃密な夜の空気に包まれます

 ジャズは夜に聞くものだ、ということを確信させてくれる1枚。なにしろタイトルからして『ノクターン』=夜想曲ですからね。チャーリー・へイデンはべーシストですが、これは、単なるベースのアルバムじゃありません。キューバ出身のピアニストであるゴンサロ・ルバルカバ、パーカッショニストのイグナシオ・ベローアというキューバ出身のチームとトリオを組んで、キューバ、メキシコのボレロの名曲を演奏しているキューバン・バラード(ボレロ)アルバムです。ちなみに、ボレロというのは、ラヴェル作曲の「あの曲」だけを指すんじゃなくて、スペイン起源の一音楽ジャンルを言います。アメリカにおけるラテン音楽の源流ともなったものなのです。

 さて、アルバムのリーダーってのは、どうしても自分が多く演奏したいものだから、ついついソロを多く入れてしまって、聞くに堪えないオナニー・アルバムを作ったりするものです。特にベースのソロってのは、指で弾くピチカート奏法だろうが、弓を使うアルコ奏法だろうが、ただひたすらに暗くて重くて単調で辟易してしまうんですね。しかし、このアルバムでは、どちらかと言うと、ベースは後ろで控えめに演奏しています。チャーリー・へイデンのプロデューサーとしての考えでしょうね。正解だと思います。「俺が俺が」で、ろくなことはできませんよ。

 更に、ゲストにギターのパット・メセニー、サックスのジョー・ロヴァーノとダヴィッド・サンチェス、バイオリンのフェデリコ・ブリトス・ルイスを迎え(なんて偉そうに書いていますが、パット・メセニー以外は、聞いたことない人ばっかりです)、独特の雰囲気を醸し出しています。このバイオリンってのが、うまく作用しているんでしょう。正直、ジャズには合わない楽器だと思うし、進んで聞きたい楽器じゃないんですが、このアルバムに関しては、認めないわけにはいきませんね。適度な湿気を保った(京都の夏の夜ではありません。あれは最悪。地獄)濃厚な夜の雰囲気。極めて叙情的。ジャケットそのままの哀愁漂うムードが味わえる名盤です。

 しかしねぇ、夜に一人でジャズを聞いてるってのも寂しいもんですがねぇ。ジャズにはいい酒といいオンナがよく似合うって言いますけどね、酒なんか飲んだらジャズだろうが軍歌だろうが関係ありませんしねぇ。そもそも、私ゃそんなに酒好きじゃないし、いいオンナに隣に座られたことなんかありませんしね。そもそも、いいオンナなんてものが隣に座った日にゃ、音楽なんぞ耳に入りませんよ、いやホント。


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