ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

THE VERY BEST OF MARTIN DENNY THE EXOTIC SOUNDS

MARTIN DENNY  1996年発売


私のラバさん酋長の娘 色は黒いが南洋じゃ美人

 私の世代なら、YMOに多大な影響を与えたということで、名前を知っているマーティン・デニー。そうです、YMO結成のきっかけは「マーティン・デニーが演奏した「ファイア・クラッカー」のエレクトリック・チャンキー・ディスコ版を作りたい」だったのですね。エレクトリック・チャンキー・ディスコって何?

 まぁ、それは措いとくとしても、最近ではYMOを知らんという若者が増えていてジェネレーション・ギャップを感じまくる日々なのである。日本の音楽シーンに多大な影響を与えたYMOを知らんなどということが許されるのでありましょうか。YMOがなければ小室はいなかったし、て言うか、そもそも現代の「打ち込み」などというものも何十年も遅れていたはずで、つまり、日本の音楽シーンなるものは、まったく違うものになっていたことは間違いなく……あぁ、こういうことを言うのはオッサンなのでしょうか。私より上の世代のオッサンたちが、ビートルズが以下に物凄かったかを語るのと同じ構図ですね。イヤだなぁ。歳を取ったってことかなぁ。

 さて、これはエキゾチック・サウンド(エキゾチカ)の第一人者、マーティン・デニーのベスト盤。ズバリこれ1枚ありゃ良いや、みたいな超徳用盤。もちろん「ファイア・クラッカー」も入っておりますよ。エキゾチカというのは、1950~60年代に流行した音楽ジャンルのことで、なんと、マーティン・デニーのアルバム名が由来です。第一人者と呼ばれるのは当然ですね。ヴィブラフォンなどの鍵盤打楽器、ラテンパーカッションやアジアやアフリカの民族楽器を取り揃えた上、変な風鈴みたいな音とか鳥やカエルの鳴き声みたいな音まで入っていて、これぞ南国!という雰囲気を演出しています。

 しかし、「エキゾチック」ってこういうことなんでしょうか?これってジャングル手前の土人の楽園じゃないのか?昔の映画やなんかには、日本語ペラペラで、何故か異常なまでに親日的な南海の孤島みたいなのが、よく出てきましたが、南国幻想というのは、日本だけのものではないようで、欧米人にとっての「理想の楽園」を、オセアニア、東南アジア、アフリカ、そして東洋のスパイスを効かせて現出させた音楽です。ですから、本物の民族音楽なんかとは全然違います。貧しさとか自然の厳しさとか、そういったものは排除されていて、真っ青な空の下、ハンモックに揺られて気持ちEといった、ある意味能天気、悪く言えば差別的、帝国主義的なものなのです。もっとも、そんな政治的なことを考えながら聞くようなものではなくて、カクテル片手に気楽に聞けばいいんです。BGMに最適なアルバムですね。


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