ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

MUSIC FROM A SPARKLING PLANET

ESQUIVEL  1995年


メキシコから来た出っ歯おやじ

 こういうのをモンド・ミュージックと呼ぶらしいです。そもそもモンド・ミュージックとは何なのかということが良く分からないんですけど。「モンド」というのは、もちろん中村ではなくて、イタリア語で直訳すると「世界」です。イタリア映画『世界残酷物語』の原題『MONDO CANE(犬の世界)』から来た言葉です。この映画は、インターネットはもちろん海外旅行すら高嶺の花だった時代に、世界の奇習や風俗を撮影しまくったものですが、民俗学的、文化人類学的に考察してみましょうなんてもののはずはなく、過激映像を、やらせも含めて野次馬どもに提供してやるぜ!という極めて志の低いものでした。

 そんな映画のタイトルから来た言葉を冠する音楽ですから、これまで評価の対象とみなされていなかった音楽、B級の音楽、というようなことですかね。出来が良いとか悪いとかいう以前に、どんな出来かすら興味を持たれなかった音楽が流行するのですから、時代の爛熟というか何というか。

 さて、このアルバムには、変な音が鳴りまくっています。びろろ~ん、びゅわわ~ん、ずーずーずー。←こんな音です。いやマジで。スペース・エイジ・バチェラー・パッド・ミュージックとも言うらしいです。「宇宙時代の独身者の家の音楽」ということで、ものすごく魅力的なような、寂しいような、まぁ、確かに私向けです。

 このエスキベルという人は、メキシコの音楽家。ビッグバンドを率い、ステレオ録音の特性を生かして、いろんな音をあっちこっちで鳴らす、不思議な演奏で注目を浴びました。レパートリーはジャズやラテンの名曲が中心なのですが、スタイルはジャズともラテンともムード・ミュージックともつかない独自、というか縦横無尽の無茶苦茶。マリンバが右と左のスピーカーを動きまわるかと思えば、ハワイアン・ギター、ヴィブラフォンなんて変り種の楽器はおろか、奇妙な男女コーラス、チャイム、口笛まで使います。このアルバムでも、「第三の男」とか「all of me」なんて曲を演奏していますが、普通じゃありません。

 簡単に聞き流せず、かと言ってスピーカーと睨めっこしながらじっくり腰をすえて聞くというわけでもない。微妙なところで成立してる音だと思います。こういうところがモンドのモンドたる所以なのでしょう。とにかく一聴の価値有りの奇妙奇天烈音です。しかし、このおっさんの顔もインパクトあるね。ものすごく胡散臭い。チョコレートくれる言われても絶対付いていかへん。なんや、この眼鏡。トニー谷か。と言うても最近の若い人には分からないですか。さいざんすか。


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