ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

IVORY & STEEL

MONTY ALEXANDER  1980年録音


青い空、白い雲、ゲテモノジャズ!

 今更改めて言うのもなんなのだが、私は変わった楽器で演奏されているジャズが好きなのである。ピアノやサックスも良いのだけれど、そればかりでは、やはり飽きてしまう。電気楽器やヴィブラフォンに始まって、チェンバロにスティール・ギター、果てはシタールやバグパイプなど、滅多に聞けない音色を探して回る日々なのである。しかし、フュージョン方面に走るのは好みではないし、メロトロン等使いまくりのプログレにはボーカルなしのアルバムが極めて少ない(ボーカル物は、すぐに聞き飽きるから嫌い)ということもあって、偏狭なジャズ界だけで探しているのだが、これがなかなか難しい。おまけに物珍しさだけに走って、演奏自体がつまらないというものも多く、なかなか楽しいアルバムに巡り会えず、カワイコちゃんにも巡り会えない我が身の不運とあわせて暗い気分になったりするのだが、辛抱強く探し回っていれば、天に願いが通じる時もあるのだ(ただし、カワイコちゃんには巡り会えていない)。とか言いながら、実は偶然見つけただけで、出会い頭の事故みたいなものなんですけどね。

 さて、アルバムタイトルは『アイボリー・アンド・スティール』。ポール・マッカートニーとスティーヴィー・ワンダーの曲に「エボニー・アンド・アイボリー」という曲があり、あれはピアノの黒鍵と白鍵、黒人と白人を象徴するという深い意味があって結構なのだが、本作は白鍵(象牙)と鉄という深みも何もない、そのまんまのタイトル(まぁ、こっちの方が2年早いのだけれど)。おまけにジャケットは象と溶鉱炉という、デザイナーのやる気とセンスのなさが爆裂した出来で、購買意欲減退に一肌脱いでくれている。しかし、スティールパンのジャズアルバムなんて、そうそうお目にかかるものではない(他にはサポディラ・パンチの『スティール・ソウル』くらいしか知らない)ので、恐れず臆せず聞かなければならないのだ。

 まぁ、メンバーを見れば、ピアノはモンティ・アレキサンダーということで一安心。この人の演奏は実に達者で、弱冠20代で物したセカンドアルバム『スパンキー』なんて大傑作。スティールパン奏者はオセロ・モリノーという人である。初めて聞いた名前だが、この世界では有名なのだろうか。それはさておき、演奏は明るく楽しく、ナット・アダレイの「ワーク・ソング」や、ジョン・コルトレーンの「インプレッションズ」とマイルス・デイビスの「ソー・ホワット」のメドレーをやったかと思うと、「ディア・ハンターのテーマ」や「星影のステラ」を演奏するといった支離滅裂ぶりだけれど、それもまた良し。ここでジャズの名曲を演奏して世間の評判を窺い、好評だったのを受けて続編『ジャンボリー』で南洋趣味を大解放したようだ。この後、アレキサンダーはジャマイカ出身の血を沸き立たせて、純粋なジャズからレゲエ方面へと走り出したりするのだが、それはまた別の話。それにしても、ここまで来たら、後はガムランとジャズのコラボくらいしか興味あるゲテモノは思いつかんなぁ。もう足を洗えということなのかしらん。


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