ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

REFLECTIONS

寺尾聰  1981年


曇りガラスの向こうは風の町

 寺尾聰も、すっかり渋い俳優さんになっちゃって、いまや、さすが宇野重吉の息子って感じなのですが、私にとっては永遠に『西部警察』のリキなのです。サングラスに44マグナム、あのカッコよさは舘ひろしなんか目じゃなかったわけですよ(て言うか、舘ひろしが出ていたのを見た記憶がないのだが……古手川祐子は覚えてるけど)。妙に四角いレイバンのサングラスがいい味出してました。

 女性視聴者(いたのか、そんなもん)の人気を独占していたらしいのですが、「ルビーの指環」が売れすぎたせいで忙しくなって、石原裕次郎や渡哲也が拗ねたのかなんなのか、石原軍団を追い出されてしまったわけですね。渡哲也は「今では指環も回るほど」なんて歌ってましたしねぇ。で、『西部警察』では派手派手しく、マシンガンで蜂の巣にされて殉職してしまいました。可哀想でしたねぇ。

 もともとグループサウンズ出身の人ですが、売れすぎるってのも困ったものですね。後の舘ひろしの「泣かないで」くらいにしておけば良かったんでしょうが、なにしろ「ルビーの指環」はオリコンで10週連続1位、結果として1981年の年間第1位という売れっぷり。『ザ・ベストテン』でも12週連続1位(「SHADOW CITY」、「出航 SASURAI」の3曲同時にベストテン入りってのもあった)で、記念に真っ赤なソファを貰ってましたが、嬉しかったのだろうか、あんなもん。

 で、このアルバムは、前記3曲も収録した寺尾初のオリジナルアルバム。全曲、自ら作曲しています。歌が上手いのかと言われると、ちょっと口ごもってしまいますが、雰囲気で聞かせるのは石原プロの面々と同じ。独特の犬掻きポーズで歌う姿が印象的でした。オリコンLPチャートで週間推定売上10万枚超えを史上初めて達成(しかも3週連続!)、12週間1位をキープしたという化け物みたいな作品です。

 今はCDが売れないらしいですが、まぁネット配信とかいう状況の変化もさることながら、良質の作品がない、わざわざ買って聞こうと思わせる曲がないというのが最大にして本質的な原因なんじゃないんでしょうか。その点、このアルバムは、当時34歳の寺尾が放った実にアダルトで都会的なムードを持った佳作。こんな歌、今じゃ、どこへ行っても聞けないですよ。男が聞いて恥ずかしくないカッコイイ曲ってのは、まさに壊滅状態ですね。私はヒットした3曲より、「渚のカンパリ・ソーダ」と「予期せぬ出来事」って曲が好みです。あまりに出来が良かったのか、2006年には『Re-Cool Reflections』として、25年ぶりにセルフ・リメイクされて話題になりました。


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