ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.2

[音楽]菅野よう子  2004年


孤立した個人でありながらも、全体として集団的な行動を取る

 『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は、あれだけ評価されたのに関わらず、何故か夜中にひっそりと始まった(最初は衛星放送)新番組『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』。映画は、あの『マトリックス』にも影響を与えたとか言われて持て囃されているのに、この放映時間の冷遇ぶりは何?いくらオタク受けしても、テレビじゃ、やっぱり『名探偵コナン』に勝てないってこと?それは正しい判断だ。正直、映画は、あんまり面白くなかったし……。

 いや、やろうとしていることは分かるんですが、暗くて重くて、スッキリしないのですよ。特に続編『イノセンス』なんて、見た人の気分を悪くするためだけに作られたようなものだし。まぁ、理屈屋の左翼崩れの惜しい、もとい押井守監督の作る映画ですからね。いつまで経っても『紅い眼鏡』、いや、『とどのつまり…』と同じことを延々と繰り返しているだけなのですね。嫌いじゃないんですけどねぇ……。

 でも、ああいうのに惹かれまくるタイプ(理屈が大好きな正統派オタク)が深く静かに潜行しているのも確かで、『マトリックス』を作ったウォシャウスキー兄弟だったんでしょう。正直、あんな映画が広く一般大衆にアピールすること自体おかしいのであって、ああいうのは、ごく限られた人たちの間で話題になるべき作品だと思います。みんな、CGの画面にキャーキャー言ってるだけで、本質を見てないだけなのよ。映像も物語も、そんな、やいやい言うほどのもんじゃないですよ、冷静に見れば。

 それはさておき、これはテレビ版のサントラ。音楽担当は、押井守作品でお馴染みの川井憲次から『カウボーイビバップ』でお馴染みの菅野よう子にバトンタッチしています。ものすごく多作なはずなのに、代表作と問われると、具体的な作品名があんまり挙がってこない不思議な人ですね。地上波放送版主題歌「GET9」はエアロスミス「walk this way」のパクリじゃないかとか思うんですが、ファンクでヒップホップな感じでイカシてます。これと、続編『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』の DVD 用オープニングテーマ「rise」をフルサイズで収録しているのは、このアルバムなので、間違って『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX O.S.T.+』を買っちゃいけませんよ。「rise」の方が、近未来で観念的で無国籍な『攻殻機動隊』っぽさに溢れた名曲だと思いますが、内容も音楽も、劇場版よりわかりやすくなったような気がします。そんな当たりのよさも含め、いろんな作風を駆使する器用な作曲家ですが、『八つ墓村』の(って矮小化しすぎですが)芥川也寸志に師事していたという意外な経歴の持ち主。


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