ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

VIRGINAL

南野陽子 1986年


こんなにキレイなアイドルは二度と出ないだろう

 2003年末、「吐息でネット」を歌うナンノを見ました。しかも2番組で。かなり懐かしかった。なにしろヒラヒラの付いたスカートで、アイドル!って感じの姿で出演していて、ナンノも、もう37歳だというのに、何か吹っ切れたのでしょうか?この年で、あんな衣装っていうのもすごいけれど、歌唱力、全然向上してないもんなぁ。下手糞よなぁ。よく歌番組に出る気になるよなぁ。一緒に出ていたのは同級生二人で、演歌で成功している長山洋子(歌ったのはもちろん「ヴィーナス」)、当時ミュージカルで成功していた本田美奈子(歌ったのはもちろん「1986年のマリリン」。この2年後、病没)。ちなみに、他に同級生といえば、岡田有希子宮崎ますみ石野陽子倉沢淳美高部知子……なんか、ものすごい不遇な面々ですが、南野陽子も、今なんにも成功してないもんなぁ。歌唱力は無い、演技力は無い、バラエティーで使えるわけでもない、こんな三重苦で、おまけに生意気だの性格悪いだの言われて、よくもまぁ芸能界に居続けられたものだと思います。

 だって、ナンノの代表作って、『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』でしょ、やっぱり。あの時代の記憶だけで生きているといっても過言ではないですよね。そのアイドル時代を支えたものは、身も蓋もなく言ってしまえば、単に「美形」だった、ということだけ。昔ファンだったからこそ、ここまで断言できちゃうんですが、つくづく類稀なる美形というのは大したもんだと思うわけです。なにしろ、当時、私は「世の中に、こんなに可愛い子がいるのか」「東京ならともかく、関西(兵庫県伊丹市)出身だなんて!」(東京には、美人でもヒーローでも何でもいると思っていた)と思って見ていたし、LPだって借りていたわけですから、アイドルってのは理屈で割り切れないものなのだね。

 そんな(どんな?)ナンノの歌では、「話しかけたかった」とか「涙はどこへいったの」みたいに、多分女性が聞くとムカつくんだろうなぁと想像される失恋系(あんな美人が失恋するわけないじゃん)の歌が好きな私なのですが、この2ndアルバムに収められた「黄昏の図書館」が名曲。この曲の切ない、甘酸っぱい、セピア色な、どこにでもありそうで絶対にないシチュエーションといったようなものは、全世界の文系男子の憧れの風景なのであります。そして、この声。演技派女優への転身という、アイドルなら誰もが夢見る、芸能界で生き続けるためには不可避なハードルを、絶対に乗り越えられなくしているナンノの声が、この曲を名曲たらしめる要素なのであります。そんな声で、実に素人まるだし、クラスの女の子的な歌唱力で文科系青春を描出された日にゃ、こりゃたまらんということなのであります。ベスト盤に収録されることはないけれど、実にいい曲です。そして、このアルバムは、アイドルのレコードなのに、写真が小さくて、でも、清楚な感じが実に品が良く、見事なジャケット・ワークで歴史に残るものだと信じております。


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