ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

映画のような人生

林有三&サロン’68  2002年


私の人生という名の映画には美しいヒロインが出てこない(涙)

 そもそも音楽好きな人ってのはインドア派なのである。スポーツマンが「俺は音楽好きだぞ」なんて言っても信用できない。そんな脳みその代わりに筋肉が詰まってるような輩に音楽を嗜むなんてできっこない。中でもラウンジだのサントラだのを好んで聞く人間というのは、限りなく引きこもりなので、スポーツどころか太陽の下に出ることすら厭うはずなのだ。イメージとしての陽光は好ましく思えても、実際の紫外線だのなんだのなんて、この世から消えてしまえと思うのが本当の音楽好きというものです。ホテルのラウンジという極めて人工的な空間で流れる音楽を好むのだから、それは当然のことですね。

 さて、このアルバム。ポッカコーヒーオリジナル(通称:顔缶)みたいな人たちがいっぱいのジャケットです。ちなみに、ポッカのおっさんは、1973年登場の初代はかなり濃い顔でチャールズ・ブロンソンみたいでしたが、1987年にもみあげがなくなり、1992年にサッパリしょう油顔になり、1994年に若返って軟派な顔になって現在に至るもので、当時のポッカのデザイナーが「男の人の顔」というだけで、モデルも何もなしに描いたのだそうです。いろいろ探したんですが、デザイナーの名前が出てこないので、きっと社内で描き続けられているんでしょうねぇ。

 それはさておき、このアルバムは、角松敏生のレコーディングやツアーのサポートをしたり、クニモンド瀧口のユニット「流線形」に参加したりしていたキーボード奏者、林有三率いるサロン・バンドのデビュー作。この人は、幼少時からヨーロッパ映画やマフィアもののサントラ盤、イージーリスニング全集(「母からプレゼントされた」んですって。なんて良い環境だったんでしょう。羨ましい)なんかに囲まれて育ったそうで、その原体験を見事に反映させ、ジャズ、ボッサをベースに、オルガン、パーカッション、更にストリングスとスキャットが乗る、昔懐かしい雰囲気満点の一枚に仕上がっています。かなり良質、極上のラウンジ・ミュージックです。

 『黄金の七人』シリーズでお馴染みアルマンド・トロヴァヨーリ『ベルトリッチの殺し』『華麗なる殺人』ピエロ・ピッチオーニ、『ベニスの愛』、『ラストコンサート』ステルヴィオ・チプリアーニなどイタリアの作曲家たちの仕事を髣髴させるヨーロピア~ンで爽やかだけどちょっとアンニュイな雰囲気が漂います。こういうアルバムにこそ「BGMに最適」と賛辞を贈りたい。主張しすぎて生活の邪魔になったりせず、むしろ人生に彩を添えてくれる、まさに「人生のサントラ盤」です。こんなサントラが流れる「映画のような人生」を送ってみたいものですなぁ。主役がダメなら脇役でもチョイ役でもいいから。


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