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ありそうでなかった日本映画サントラのコンピレーション・アルバムです。収録されているのは、『殺しの烙印』だの、『女囚さそり』シリーズ(「第41雑居房」、「けもの部屋」、「701号怨み節」……あ、『新女囚さそり701号』も)だの、小林旭主演、ヒロインの松原智恵子が可愛すぎる『俺にさわると危ないぜ』(原作は都筑道夫の『三重露出』)だの、『新・ハレンチ学園』だの、『幽霊屋敷の恐怖 血を吸う人形』だの、『ノストラダムスの大予言』だのといった、マニアは大喜びだけれど、単独でサントラなんか出そうもない作品ばっかりです。
選曲は暴力温泉芸者の中原昌也。中原はミュージシャンであり作家でもあるわけですが、初期『映画秘宝』ではメイン・ライターとして海外B級ホラーを紹介したり、『ソドムの映画市』なんて本を出したりもしていますから、映画を見る目も確か。それは、ここにセレクトされた作品群を見てもお分かりになると思います(まぁ、何をもって「確か」というのか、という問題はありますが……)。ただ、最初に断っておきますけれど、そんなに名曲揃いってわけじゃないです。確かに味はありますが、後世に残っていくって程の名曲ではありません。なにしろ日本映画って奴は、音楽にそんなに気を遣っていたとは思えないし、印象に残るメロディーってあんまりないですからね。それに、ここに収録されているのは、いわゆるプログラムピクチャーばっかりですから、音楽にマトモな予算がつけられていたとも思えません。
というわけで、これは、あくまでもレアでチープな雰囲気を味わうためのアルバムです。シネコンなんて洒落たものの無かった頃、薄汚い場末の映画館で徹夜した頃の思い出が蘇ってきますよ。ふらっと入ったら、一本目の映画が終わりかけで、ラストシーンだけ見せられてはたまらないからトイレ臭い廊下のボロっちぃソファで漏れてくる音だけ聞きながら待って、出て行く客と入れ替わりに中に入り、一回見たけど、まだ時間があるからそのまま続けて2回目を見て、映画を見てるんだか半分眠ってるんだか分からないままに終わっちゃって、映画館を出たら世界は薄く青い色に染まってて、人気のない道にゴミ袋だけが置いてあって、人生の落伍者になったかのような一種甘美な思いを抱きながら家路につくっていう、ああいう背徳的な映画の楽しみ方ってものは、二度とできないんですかねぇ。それはそれで寂しいもんですねぇ。
なお、この「GO CINEMANIA REEL」シリーズには、他にも元ピチカート・ファイヴの高波敬太郎監修の『パンチ・ザ・ガイ』、『エロチカ狂想曲』、元東京パノラママンボボーイズで元祖和モノDJコモエスタ八重樫監修の『若い突風』、川藤正幸、藤木TDC監修の『ワイルドサイケを歩け』なんてのがありまして、いずれもマニアックな選曲で一部の好事家を喜ばせております。