ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

LEROY WALKS!

LEROY VINNEGAR  1957年録音


ジャズ・ベースは、これだけ聞いておればよいわ!

 ジャズ・ベースの名盤というと、ポール・チェンバースの『ベース・オン・トップ』とかクリスチャン・マクブライドの『ファースト・ベース』なんてあたりがよく紹介されるんですけれど、実は、これこそが最高の名盤なんですね。ヴァイブのヴィクター・フェルドマンが入ってるからって言うんじゃないですよ。ヴァイブが入ってたって、つまらんアルバムはあるんですよ。ロン・カーターの『スターダスト』みたいにね。ロン・カーターといえば、私がこれまでの人生で唯一足を運んだコンサートの主役なんですけどね。

 あれは高校生のときでした。サントリーウイスキーのCMで、やたらめったら流れてて、えらく気に入ってたんですよ。チケットをプレイガイドで買うのもドキドキしたもんです。コンサート当日は中間試験だか期末試験だかの最中の日曜日で、風邪ひいて熱出してるのに、チケットを買ってたからもったいないってんで、チャリンコに乗って行きましたよ。もちろん一人で。そしたら担任の先生と出くわしましてね。「勉強もせんと、こんなとこに居ててええんか」とか言われましたね。ほっとけっちゅうんじゃ。いやぁ、それにしてもタバコくさいコンサートでした。休憩時間のロビーなんて真っ白に煙って何も見えやしないんだもの。不思議と、演奏そのものについての記憶がないのです。風邪でボーッとしてたからかしら。

 それはさておき、ベーシストのリーダー・アルバムって奴は、日ごろ日陰の身に甘んじてるせいか、ここぞとばかりにソロをぶちかますんですね。いや、別にぶちかますのは構わないんだけどさ、曲のバランスなんて何も考えずにボンボロボンボロやるもんだから鬱陶しくてたまらない。ねぇ、地味な人間がたまに目立つと舞い上がっちゃうのよねぇ。気をつけないと。ロン・カーターのアルバムがつまらないのは、ひとえにこれが理由なのであります。しかし、このアルバムは、そんなことありません。リロイ・ヴィネガーは、ウォーキング・ベース(歩いているようなテンポ、雰囲気を醸し出すベース・ラインのこと。明るくスキップするようなベース・ラインが代表的。特に4ビートのジャズによく使われ、スウィング感を作り出す……のだそうです)の名手で、ザ・ウォーカー(The Walker)というニックネームが付けられていたほど。このアルバムは、それにちなんで、「Walk On」、「Would You Like To Take A Walk」、「On The Sunny Side Of The Street」、「Walkin'」、「Walkin' My Baby Back Home」、「I'll Walk Alone」、「Walkin' By The River」と「Walk」つながりの曲ばかり収録と洒落ています。実にノリが良く、これぞジャズ!ってな雰囲気を湛えまくった名盤です。


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