ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

THE LATIN BIT

GRANT GREEN  1962年録音


我が一推しのジャズギタリスト

 ジャズ・ギターのアルバムって、何故か退屈なのが多いんですね。名盤の誉れ高きウェス・モンゴメリーの『インクレディブル・ジャズ・ギター』も通して聞くのはチト辛い。ホーンの入った編成でも、なんだかスッキリしないものがある。やっぱり音も小さいし、音色も地味すぎて、あまりにストイックな雰囲気に圧倒されてしまうからでしょうね。要するに暗いのよ。じとじと雨が降ってるイメージがあるのよ。

 別にギターに四畳半フォークのイメージがあるとかサルマタケとか偏見があるわけじゃないんですが、私の考えでは、ジャズというのは、本質的に暗い音楽であって、そんな暗い雰囲気に浸る自分を愛するという自意識過剰で前髪垂らりでナルシスティックな音楽なのだと思っているのですが、あんまり暗いと落ち込むだけで、雰囲気に浸る楽しみを味わえなくなってしまう恐れがあるわけです。これでは何のために聞いているのか分からなくなるわけで、ジャズ・ギターを聞くときには十分注意が必要なのです。で、対策としては、アルバム丸ごとではなくて、2~3曲聞いて止めにしておくというのも方法ですけれど、そんな面倒なことはしてられないぞというあなた。問答無用でゲテモノ路線を突き進むのがいいのであります。

 といっても、どんなのを探せばいいのか分からないとお嘆きのあなた。これです、これ。名門ブルーノート・レーベルから出ているこのアルバム。ブルーノートのアルバムだから、ゲテモノと言ったって、聞けば悶絶なんて劇薬ではありません。バックにパーカッションを配し、ラテン・ナンバーに挑んだグラント・グリーンの最高にファンキーな作品です。グラント・グリーンといえば、1960年代のブルーノート・レコードを代表するギタリストであり、オーソドックスなビ・バップから、モード・ジャズ、そしてジャズ・ファンクに至るまで、さまざまなジャンルで活躍した人です。したがって、様々なタイプの作品があるわけですが、各種ガイド本では、『グランツ・ファースト・スタンド』とか『アイドル・モーメンツ』なんて初期の作品が紹介されていて面白くない。やはり、グリーンを聞くなら60年代後半以降、ビ・バップ・スタイルを卒業してからのアルバムを選ぶべきでしょう。でも、いきなりファンク・スタイルに変貌したアルバムは怖いということなら、これ。このジャケットからして人を舐めているアルバムは、初期作品ながら「ベサメ・ムーチョ」に「ブラジル」に「ティコ・ティコ」に「マンボ・イン」とラテン・ナンバーがギッシリの異色作。明るく聞きとおせるギターアルバムなんて、そうあるもんじゃないですよ。即ゲットして間違い無しの隠れた名盤です。


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