ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

ROOT DOWN

JIMMY SMITH  1972年録音


ジミー・スミス唯一の名盤がこれだ

 オルガン・ジャズの帝王、ジミー・スミス。オルガンというのも不遇な楽器で、ジャズのアルバムを楽器別に紹介してあるガイド本だと、「オルガンその他」としてフルートだのヴィブラフォンだのと一括りにされることがあります。しかし、そんなときでも、この人の名前は必ず出てくるのだから偉いもんです。

 ピアニストから後にハモンドオルガン奏者としてソウル・ジャズというスタイルを確立し活躍、B-3という形のハモンドオルガンを普及させたという、オルガン業界の人間なら足を向けて寝られないお方。従来に無いファンキーで斬新なオルガン奏法は、多くの後進オルガニスト達が手本にしており、おまけに、あの「ジャズの帝王」マイルス・デイビスをして「世界8番目の不思議」と言わしめたとのことですから、凄い人なのです。マイケル・ジャクソンの「Bad」にも参加したそうですよ。

 で、私もオルガンの音色は好きなものですから、いろいろ聞きましたよ、この人のアルバム。ギターとドラムスとのトリオによる『クレイジー・ベイビー』『オルガン・グラインダー・スウィング』スタンリー・タレンタインのテナーが入った『ミッドナイト・スペシャル』ラロ・シフリン・オーケストラとの『ザ・キャット』……みんな名盤として紹介されているものばかりです。『クレイジー・ベイビー』なんてジャケットも秀逸ですしね。でも、私にはピンと来ないんですねぇ。現代の耳で聞くせいか、斬新どころか非常に端正な演奏に感じられるのです。特に、オルガン・トリオは音色が地味で、同じ地味でもピアノ・トリオの方がまだマシに思えてしまうんですよ。

 そんなわけで、オルガン好きにも関わらず、この人のアルバムは敬遠していた私なのですが、このアルバムには興奮させられました。普通のガイド本じゃ、まず紹介されることはありませんが、これこそノリノリ、ギトギト、コテコテのライブ盤です。やっぱり、オルガン弾くからには、こういうのをやってもらわなきゃ!って感じですね。他のメンバーは、ギターにアーサー・アダムス、ベースにウェルトン・フェルダー、ドラムスにポール・ハンフリー、コンガ、パーカッションにバック・クラーク、ハーモニカにスティーヴ・ ウィリアムス。やっぱり、このくらいの編成じゃないとオルガン・ジャズは面白くありません。

 一説によると、これはジャズじゃなくてソウルだ、なんて話も聞きますが、そんなもん、どっちがどうだって構いやしねぇ(て言うか、違いがよく分からない)、聞いて気持ちよく腰がクネクネしちまえばいいですよ!もうオルガンが「ぎよんぎよん」鳴りまくってますよ。「ぎよんぎよん」って我ながら変なオノマトペですが、本当にそんなふうに聞こえるんですよ。ちなみにオノマトペってフランス語なんですね。


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