ダイキチ☆デラックス~音楽,本,映画のオススメ・レビュー

ダイキチデラックス

渡辺宙明BGMコレクション“CHUMEI”BRAND

[音楽]渡辺宙明  1996年発売


贅沢を言えばきりがないがそれを言わせぬ力技

 テレビ特撮作曲家御三家である、ライダーの菊池俊輔、戦隊の渡辺宙明、ウルトラの冬木透(菊池、渡辺両名はアニメでも偉大な足跡を残していることは言うまでもない)については、日本コロムビアが「永久保存盤 BGM COLLECTION」という(1人につき)2枚組を出している。しかし、正直言って選曲が非常に大雑把である。それぞれ4作品だけを選曲の対象にしていて、菊池盤は『タイガーマスク』、『新造人間キャシャーン』、『ゲッターロボ』、『UFOロボ グレンダイザー』、渡辺盤は『マジンガーZ』、『グレートマジンガー』、『鋼鉄ジーグ』、『マグネロボ ガ・キーン』、冬木盤は『ウルトラセブン』、『帰ってきたウルトラマン』、『ウルトラマンエース』、『ザ・ウルトラマン』の曲しか収録されていない。ウルトラに絞った冬木盤に関しては一歩譲っても良いけれど(それでも『ウルトラマン80』が省かれる理由が分からない)、他の2セットは何故アニメだけに絞られたのか、更に何故その4作品なのかもよく分からない構成で、発売当時マニアが「こんなもん永久保存するか!」と激怒したであろうことは想像に難くない。それを大いに反省したのかどうか、改めてCD1枚でベスト盤が作られたのである。

 というわけで、『菊池俊輔BGMコレクション SHUNSUKE KIKUCHI SONG BOOK 1968-1975』に続いて発売されたのが本作。前作にあたる菊池編は、代表作『仮面ライダー』をはじめとする特撮番組、『キイハンター』、『Gメン’75』などのアクション番組にもちゃんと目配りして、全16作品の主題歌・挿入歌のインスト・ヴァージョンをギンギンに詰め込んでいたけれど、それでも選曲に相当苦しんだんだろうなぁと思わせて泣かせる。何しろ手がけた作品数が多すぎるから、どうしても取りこぼしが出てくるのは分かるけれど、代表作の『暴れん坊将軍』が入っていないのはいただけない。いっそ各作品から1曲ずつに限定して、『江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎』だの『クレクレタコラ』だの『闘え!ドラゴン』だの『ラ・セーヌの星』だの『なんたって18歳!』だの『白い牙』だの(できれば、おまけで「怨み節」も)に振り替えればベストに名にふさわしくバラエティ豊かになったのにと残念でならない。

 その点、渡辺編は、『秘密戦隊ゴレンジャー』でゴレンジャーハリケーンのときに流れた「ゴレンジャーがやってくる」や『ジャッカー電撃隊』で行動隊長ビッグワンが主役どころかBGMまで乗っ取った「スペードエース若き獅子」が入っていないなど、実は有名曲の取りこぼしも多数ありそうなのに、それほど気にならないのは、主題歌メロオケではなく、どれを聞いても同じ、いや、偉大なるマンネリの劇伴からの選曲が功を奏したのだろう。新しめの作品からは『光速電神アルベガス』『ビデオ戦士レザリオン』からも選曲(例えばこれがもっと新しい『破邪大星ダンガイオー』だったとしても、アルバム全体の仕上がりは大して変わらないに違いない。さすが偉大なるマンネリ)、最後にマニア感涙の宇宙刑事シリーズのレーザーブレード3連発まで収録して大満足の仕上がり。なお、この後に発売された『冬木透BGMコレクション“ULTRA”GALLERY』は、取りこぼし感ゼロ、日本サントラ界屈指の大傑作なのでお聞き逃しなきよう。そして、これらのベスト盤を連続リリースするという神をも恐れぬ大偉業を成し遂げた早川優氏に惜しみない賛辞を!


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